視点

「従来型」の企業がテクノロジー企業から学べる3つの教訓

皆さんがよく知っている商品やブランドをいくつか考えてみてください。最初に思い浮かぶ名前は、おそらく多くの人が「伝統的・従来型」と考えるような物理的な商品を製造している企業であることは間違いないでしょう。

このような大規模企業には、歴史的な歩みがあります。その多くは、数少ない優れたプロダクトを提供する零細企業のようなスタイルから、長年の一貫性と、可能な限り最高の顧客体験を提供するというコミットメントを経て、世界に名だたる巨大企業へと成長してきました。こうした企業(とその顧客)は歴史的に、「プロダクト」を物理的な商品やサービスの提供と考えてきたのです。そして数十年前までは、物理的にではなくデジタル上で人々がどのように関わり、つながり、購入するかを考える必要などありませんでした。

しかし今は状況がだいぶ違います。業種を問わず競争の場はグローバルに拡大し、企業はどこにいても顧客に対応できるデジタルレイヤーを必要としています。もはや優れた物理的なプロダクトを構築するだけでは十分ではありません。アパレルブランドから銀行、レストラン、製造業者に至るまで、あらゆる種類の企業も、自社のプロダクトを世界につなげるために優れたデジタル体験を必要としています。 

伝統もデジタル化する時代がきたのです。

現代の消費者は、業界に関係なく、企業が製造または提供するプロダクトが、物理的に得られる体験以上のものであることを期待しています。ブランドは、物理的なプロダクトを向上させたり充実させたりするデジタル体験を提供する必要があります。以下はその例です。

  • みんなが大好きなファストフード、ハンバーガーのチェーン店に対する全体的な印象は、もはやハンバーガーそのものだけでは決まるものではありません。アプリやウェブサイトにログインし、(おそらく深夜の)配達を注文して追跡し、次回使用するポイントと特典を獲得し、最終的にはおいしいハンバーガーを食べるという経験の積み重ねで形成されます。
  • テーマパークへの素敵な家族旅行は、天候に恵まれ、子供の機嫌がよく、手入れの行き届いたアトラクションを楽しむことだけを意味するものではありません。それは、訪問の計画、予約の管理、食事の注文、乗り物の待ち時間の確認に使うモバイルアプリによって形作られ、子供たちの満足度を期待通りに保つことができます。
  • また、医師の診察は今や病院だけで行われるものではありません。遠隔医療サービスを利用すると、インターネットまたは携帯電話接続があれば、医療にもっともアクセスしづらい地域でも治療を受けることができます。

可能性に満ちた世界でプロダクトに携わるのは、実に興味深いことですが、現実は、こうした体験やインタラクションはすべて、それを支えるソフトウェアがあってこそ実現するものです。もしあなたのアプリが動作せず、ユーザーを不快に思わせたままだったら、ユーザーはハンバーガーが食べられず、子どもも(親も)不機嫌で、そして最も医療を必要としている地域に医療が提供されないことを意味します。

優れたデジタルプロダクト体験の構築は、かつてないほど重要になっています。そして、私たちが長い間「従来型」と考えてきた企業にとっても、提供する物理的な体験やサービスの質に焦点を当てるだけでなく、関連性と競争力を維持し、適切なオーディエンスとつながり、顧客が望み必要とするものを提供できるような、自社プロダクトのデジタル対応品の作成に注力することが、非常に重要になっているのです。

あらゆる企業の成功が、デジタルネイティブ化が進む消費者のニーズに応えられるかどうかにかかっている世界では、すべての企業がソフトウェア企業のように考え、行動することを学ばなければなりません。そしてこれが、従来型企業がテクノロジー企業から学習できるポイントなのです。

 

教訓1:デジタル体験を軽視しないこと

ほとんどのテクノロジー企業は、従来型の企業のように数十年にわたるブランドの恩恵に浴することはできませんが、ある重要な分野で一歩リードしています。初日からデジタルファーストを貫いており、彼らのプロダクトがソフトウェアである点です。

これらの企業にとって、成功は常にユーザーに欠かせない完璧なデジタル体験を提供できるかどうかにかかっています。一方、物理的な製品やサービスで知られる企業は、「当社の顧客は私たちのアプリの良し悪しにかかわらず、この[ハンマー、機器、ズボン、ヘルスケア、銀行サービスなど]などを求めてやってくるので、そこに焦点を当てる必要はない」と考える傾向がありますが、もはやその理論が当てはまる時代ではありません。

Salesforceによると、2022年、B2B顧客の88%が、企業が提供する体験はプロダクトやサービスと同じくらい重要であることに同意しています。その「体験」は、これまで以上に、アプリやデジタルプロダクトに対する顧客のインタラクションによって形作られます。このような消費者は、これまで以上に多くの選択肢を手にしているため、デジタル体験が気に食わないという理由で離脱させてはいけません。

 

教訓2:定性的データと定量的データのどちらも必要

顧客が現在自由に使えるツールをどのように操作しているかを理解せずに、適切なデジタル体験を構築したり、それを改善したりすることはできません。プロダクトマネジメント機能の専門化を始めたばかりの多くの組織にとって、これはちょっとしたブラックボックスです。このためプロダクトマネジャー(PM)は、正確なデータではなく、直感のみに基づいて偏った意思決定を行うようになりました。

プロダクトアナリティクスにより、顧客が自社のウェブやモバイルアプリにどのように関わっているかをプロダクトチームが正確に把握するのを支援されるため、ユーザーの嗜好やワークフローを客観的に把握できます。これにより、PMは自分たちの思い込み(「この機能がユーザーにとって最も重要だと思う」)という考えを覆し、時間、エネルギー、リソースをどこに投資すべきかについて、より賢明な判断を下せるようになります(「ユーザーは実はこのフィーチャーには関心がなく、注力していなかった。他のエリアに大きく依存していることがわかった」)。

ユーザーからのフィードバックも同様に重要です。フィードバックによってプロダクトチームはユーザーがどのように感じているかを理解することができます。この定性的な要素は、データコインの裏側とも言え、最高のデジタル体験を構築する上で同様に重要な役割を果たします。フィードバックを求めることで、客観的にプロダクトを見ることができます。これにより、ユーザーがプロダクトを使うときに何を考え、何を感じるかを理解するのに役立ち、ユーザーの体験に共感することができます。そして、何がうまくいっているのか、あるいはうまくいっていないのかについて、実用的なインサイトを得ることが可能になります。さらにユーザーや顧客に対して、彼らの意見を重視していることを示すことができ、忠誠心や信頼感を育むこともできます(そして伝統的な老舗企業はこのことを熟知しています)。

 

教訓3:容易にする - ユーザーがどこにいても使えるようにする

利便性が最優先であれば、状況に応じたコミュニケーションが最も重要です。最高なデジタル体験を構築するために重要な要素は、オンボーディングから実践支援、サポート、あらゆる種類のトランザクションに至るまで、ユーザージャーニーの各ステップを、顧客がアプリを離れることなく、可能な限り容易にすることです。そして、それはすべてアプリ内ガイダンスで発生しています。

アプリ内メッセージ、いわゆるアプリ内ガイドは、タイムリーなアップデートやお知らせ、役立つリソース、ガイド付きのウォークスルーやツアーなどを共有することで、アプリのコンテキスト内で顧客と直接コミュニケーションをとることができます。先ほどの例をもう一度見てみましょう。

  • お気に入りのファストフード店のアプリを開くと、ライトボックス風のアプリ内ガイドが表示され、今日の注文でハンバーガーが無料になるという素敵なお知らせを知らせてくれる
  • 目的地のテーマパークのアプリを初めて開くと、段階的なオンボーディングウォークスルーが表示されるので、モバイル体験のすべてのフィーチャーを正確に把握し、次にどこに行くかについてストレスを感じる時間を減らし、より多くの時間楽しむことができる。
  • 医療提供者の遠隔医療プラットフォーム内では、今後の休日の営業時間を知らせるバナーが表示されるので、電話で問い合わせることなく、それに合わせてフォローアップの予約を計画することができるようになります。

アプリ内ガイドは、より良いユーザー体験を生み出すだけでなく、カスタマーサクセス、サポート、マーケティングなどの各チームがアウトリーチを拡大したり、プロダクトアナリティクスや行動データに基づいてメッセージをパーソナライズしたりできるようにすることで、企業にも利益をもたらします。これにより業務効率が向上し、チームはより価値の高い作業に集中できるようになります。

 

今やすべての企業がソフトウェア企業と言える時代。どの企業もデジタル体験を優先する必要があります。どこから始め、どのようにプロダクト体験の取り組みを進めるかについて詳しくは、こちらのホワイトペーパーをご覧ください。また、iRobotEssityLabCorpなどのブランドがどのようにして実現したかについては、カスタマーストーリーをご覧ください。