プロダクト主導型組織4社が激動のコロナ禍にどう対応したか

Tom Relihan著|

6分

 

ビジネス環境が劇的に変化する中で、組織がトップに立ち続けるための秘訣:それは「効果的なコラボレーション」と「プロダクト主導戦略」です。

これは、Pendoの年次イベント、Pendomonium 2021に集まったプロダクトリーダーたちが導き出した答えです。この不安定で予測が難しい時代にどのように対応してきたか、というパネルディスカッションでパネリストたちは、パンデミックによる規制やリモートワークの拡大により、プロダクトの需要はかつてないほど高まっていると説明しました。そして、同様の課題に直面している他のプロダクトリーダーたちに、自身の経験とアドバイスをそれぞれ共有しました。

Quickbaseが高まる需要にどのように対応したか

Quickbaseが提供する、ローコードアプリ開発プラットフォームの需要は、コロナ禍で急増しました。新たな働き方を強いられることとなった各企業が、新たなデジタルツールやサービスの導入を加速したためです。

たとえば多くの市町村が、ワクチン接種の申し込みと、コロナ規制の違反者をモニタリングするために、Quickbaseを使ってデジタルシステムを作成しました。そのためQuickbase上で何かトラブルがあるたびに、サポートへの問い合わせが急増していました。

「すべてはあっという間に起こりました。私たちにとって流れが大きく変わる出来事でした」と語るのは、Quickbaseのプロダクトオペレーション担当ディレクターのHarrison Hersch氏です。「私たちのお客様が開発していたソリューションがあまりにも重要度が高かったため、それにより我々にも多くの変化がもたらされました。」

急激な需要への対応と、頻出する問題を能動的に対処するため、Hersch氏はコラボレーション体制を強化しました。同氏のチームは、営業、カスタマーサクセス、コンテンツ、技術サポートなどの各部門と連携し、カスタマージャーニーがどのようなものかを各部門により深く理解してもらうことで、それぞれがどのように価値提供を行えばよいかを明確にしました。

Hersch氏はまた、成功を測る主要な指標であるPendoのプロダクトエンゲージメントスコア(PES)にも着目しました。PESはプロダクトの健全性を総合的に理解する複合指標として、定着率、粘着性、グロースを測定します。コラボレーションの向上によるメリットは、この指標にはっきりと表れているとHersch氏は言います。今ではPESは、プロダクト主導を推進するQuickbaseにとって、ノーススターメトリック(北極星指標)と呼ばれる重要な指標になっています。

Citrixにおける機能横断的コラボレーションの促進

Citrixが提供するソフトウェアは、チームメンバーがいつどこにいても仕事ができる環境を提供しています。コロナ禍で世界中がリモートワークへ移行した際、多くの企業がCitrixのプラットフォームに頼ることとなりました。

Citrixのプロダクトを最大限活用するには、部門を越えた横串のコラボレーションとプロダクト主導の戦略が重要でした。Citrixのカスタマーマーケティング担当ディレクターであるStephanie Monk氏は、Pendoを使用して、最も重要なメッセージだけを適切なユーザーに適切なタイミングで伝えられるよう、明確なガバナンス体制を構築しました。 

Monk氏はさらに、営業とカスタマーサクセスの各部門と連携し、ユーザーに提供している情報が、アプリ内ガイドで提供している情報と食い違いがないかを常に確認しました。また、サポートチームと協力して、サポートへの問い合わせが発生せずに済むよう、セルフサービスで解決できる箇所を特定することができました。さらには行動データからプロダクトに課題を見つけた場合は、プロダクトチームとエンジニアリングチームに通知するプロセスを確立できました。

部門を越えたコラボレーションを加速させたことで、チーム間の信頼が増し、プロセスやチームの拡大をスムーズに行えた、とMonk氏は言います。「部門横断的にコラボレーションしたことで、ユーザー体験をより包括的に見られるようになりました。」

JAMFにおいてお客様は「コラボレーター」

JAMFが提供するリモートデバイス管理ソリューションは、特にコロナ禍では多くの組織にとってライフラインでもありました。プロダクト戦略担当ディレクターのAndrina Kelly氏は、変化するビジネス環境にプロダクトを適応させるために、多くの変化が必要だったと言います。たとえば教育の分野では、学生の試験を、遠隔でも適切な監督下で厳正に実施できる方法を考える必要がありました。

そこで、コラボレーションに対する考え方を根本的に変えてみることにしました。自社のプラットフォームユーザーを、ただのお客様ではなく、「コラボレーター」として見るようにしたのです。「顧客とのタッチポイントが何かに関わらず、最高のプロダクト体験をどのように作り上げるかを考えることが、社内のやり取りや、誰が誰と話すべきかについての議論につながります」とKelly氏は言います。

JAMFでは、組織内の全員がPendoにアクセスできるようにして、全タッチポイントを見える化し、個人対個人、ユーザー対プロダクト両方の分析を行えるようにしました。これにより、無料トライアルの中でパーソナライズされたオンボーディングとガイダンスのフローを提供して、より早くユーザーに価値を見出してもらうことができるようになりました。

eLearning Brothersにとってのデータ分析の主軸

eLearning Brothersでは、コロナ禍による規制の中で学習のほとんどがバーチャルに移行したため、かつてないほど需要が急増しました。カスタマーサクセス担当VPであるRichard Vass氏は、新規顧客のオンボーディングとサポートへの問い合わせを処理するチームをすばやく設置しました。コロナ禍でできたチームであるがゆえに、多くのメンバーはお互いに直接会ったことがないにも関わらず、Slack、定例会議、社内ニュースレターを通じて意識合わせができているとVass氏は言います。

Vass氏はPendoを使って、チームのオペレーションを支える基礎的なデータを数多く見つけることで、コラボレーションを促進することができました。彼はユーザーの行動を分析することで、ユーザーのプラットフォームの使用率が低い、というチームから挙がっていた懸念を払拭することができました。分析の結果、ユーザーはツールに常にアクセスしていなくても、ツールに十分な価値を見出していることがわかったのです。

この結果にチームは安堵したと言います。この気づきはeLearning Brothersのアウトリーチ戦略にも大きな変化をもたらしました。「私たちは深呼吸をして、『大丈夫だ』と思えることができました。お客様に常に使用されていなければいけないわけではないことが分かったのです」とVass氏は話します。

また、Vass氏はPendoでNPSの回答を収集し、そのデータをSlackにプッシュ送信して組織全体で見ることができるようにしました。「この小さな機能連携が、多くのコラボレーションにつながりました。もしある会社が継続的に低いスコアのままであれば、それをプロダクト会議で議論します。私たちは、カスタマーサクセスマネージャーにその会議に必ず参加してもらい、その後ターゲットを絞ったアウトリーチを行います」と同氏は言います。

Vass氏は、eLearning Brothersのグロース(成長)業務にもプロダクト主導のアプローチを用いています。同社は新しいオンボーディング体験をデザインして導入し、適切なタイミングで適切なメッセージを送ることで、無料トライアル期間中のコンバージョン率を高めることに成功しました。「いつの間にか、コンバージョン率が50%になっていました」と同氏は語ります。

バーチャル会議を減らすコツ

上述の通り、各社はそれぞれの形で「ニューノーマル」に適応しました。しかしそれでも全員が同意したのが、オンライン会議疲れが問題になっている、ということです。オフィスで思いついた時に会議ができることはなくなりました。今や多くの人が一日のほとんどをオンライン会議をして過ごします。会議での「人間味」が減ったことで会議の楽しかった部分も減った、と言います。

これを解決するため、Hersch氏は会議する必要がある事柄とそうでない事柄を明確に決めることから始めました。さらにチームメンバーには、価値を見出せない場合は会議に参加しない、または途中退出できる自由を与えました。Monk氏のチームは、会議の議題が業務だけになってしまわないよう、毎日30分間何について話してもよい時間を設けるようにしました。「このような工夫をすることでコラボレーションを継続できました」とMonk氏は言います。 

Kelly氏も、カジュアルミーティングを開いて同僚と仕事とは関係のない話をしました。あるエンジニアは、1対1での自己紹介や会話ができるように、ランダムに同僚のペアを作るプログラムまで始めました。「これによりお互いをよく知ることができ、会議ははるかに生産的になりました。今でも多くの会議がありますが、その中でのやり取りは活発です。1人だけが話して、残りの人は黙っているという会議はもう1つもありません。」