スタートアップ企業が次の成長ステージに進むためにプロダクトを活用する方法

Sara Estes著 |

6分

 

これまでスタートアップ企業は、実験し、反復して、できるだけ速く成長するという考え方の下で運営されてきました。しかし現在の経済情勢では、こうした戦略を転換しなければなりません。

依然として成長が最優先事項ではありますが、今日の企業は成長だけでなく効率にも重点を置いています。すでにあるものをさらに活用し、コストを大幅に増加させることなく成長を促進する必要があるのです。これは単純でも簡単なことでもありませんが、ソフトウェア企業にはすでに効率的な成長を促進する最良のツールがあります。それは自社のプロダクトです。

Pendoの最新のウェビナーではこれをテーマに据え、プロダクト主導の成長の専門家4名にお集まりいただきました。Hubspot プラットフォームエコシステム担当VP Scott Brinker氏、Drift シニアスタッフプロダクトマネージャー Logan Hutchinson氏、OpenView グロース担当シニアディレクター Curt Townshend氏、そしてPendo グロース担当VP Nichole Maceが、プロダクト主導の組織が効率的な成長を維持するために最適な理由と、効率的な成長を効果的に行うためのベストプラクティスについて議論しました。

プロダクト主導がもたらすビジネスへのインパクト

プロダクト主導の成長戦略を活用することで、ビジネスにどのような成果がもたらされたのか、専門家の方々にお話を伺いました。ここではその中からいくつかをご紹介します。

    • 無料ユーザーを有料顧客に転換することで、無料プロダクトが収益増加の推進力になる。
    • 顧客が営業に相談することなく、プロダクト内で自らサブスクリプションや契約を拡張できる方法を構築できる。
    • プロダクトを使って自分でトレーニングできるようにすることで、チームは時間を節約し、より影響力の大きい仕事にリソースを割くことが可能になる。
    • エンドユーザーにもっと目を向ける。つまりユーザーに愛され、使ってもらえ、リピートされるプロダクトを開発することで、顧客獲得コストを劇的に削減することが可能になる。
    • 購入プロセスを容易にすることで、顧客にプロダクトを押し付けるのではなく、無料プロダクトを提供するなど早い段階で価値を提供し、その後、ユーザーに支払いを求めることができる。

スタートアップ企業のステージが初期段階でも成熟していても、成長を次の段階に「効率的に」進める(そして超えていく)ために、プロダクトを活用する4つのヒントをご紹介します。

1. 無料プロダクトで基盤を構築する

プロダクト主導の成長のためには、最初から強力な基盤を構築することが重要です。Nichole Maceは、無料トライアル、フリーミアムプロダクト、もしくはその両方など、ユーザーが無料でプロダクトを試すための方法を確立することが重要であると指摘しました。その上で、ユーザーに無料プロダクトを活用してもらい、使用促進に焦点を当てる必要があります。無料ユーザーがより多くの価値を体験すればするほど、プレミアムプロダクトに投資する可能性が高くなります。Logan Hutchinson氏もこの意見に賛同し、無料プロダクトで十分な価値を提供することでユーザーがアップグレードしたくなることの重要性を指摘しました。さらに、潜在的なユーザー(将来の購入者)を教育し、無料プロダクトをユーザーの最も切迫した問題の解決策と一致させるオーガニックコンテンツをさらに充実させることも重要だとしています。

2. 成功を測定するための指標を選択する

他のプロダクト施策と同様に、チームはデータを使ってプロダクト主導の成長戦術を測定し改善することができます。Curt Townshend氏は、早い段階でのプロダクトデータが大事であると指摘しました。無料プロダクトの段階で使用状況を見ればどの程度うまく機能しているかを確認できます。このデータは、無料ユーザーがどこに価値を見出しているか(最も活用しているフィーチャーはどこか)を明らかにし、対処すべき摩擦点を特定するのに役立ちます。また、このデータを活用して、投資家にポジティブな結果を示すことも有効です。

どの指標を優先させるかについて、Maceは成長指標を以下の4つに分類することを推奨しました。

    1. リテンション(例:2日目、2週目のリテンション)
    2. コンバージョン(例:無料から有料、トライアルから有料)
    3. 口コミ(例:紹介、組織内でのプロダクトの招待)
    4. エンゲージメント(例:フィーチャーの定着化、ワークフローの完了)

3. 実験と顧客を開発の中心に据える

議論の中で、重要な問いが浮かび上がりました。プロダクト主導型の企業、特にスタートアップ企業における実験の役割は何か、ということです。Scott Brinker氏の言うように、「実験してみるという考え方は、スタートアップ企業が持ちうる最大の能力」です。 

成長中のスタートアップ企業は、プロダクトの開発方法の中で実験を重要な推進力にする必要があります。アイデアをテストし、分析し、反復することが迅速な成長に欠かせない一方で、何について実験しているのかについて必ず適切な仮説を立てるようにします。このような実験に対する考え方では、失敗を許容することも必要です。テストしているものがうまくいかない場合は、思い切って破棄して次に進みましょう。

成長中のスタートアップ企業がプロダクトを開発する上でもう1つ重要なのは、自社顧客です。リソースが限られている若い企業にとって重要なのは、エンドユーザーの問題やニーズについて話を聞くことです。そうすることで、問題解決に役立つプロダクトやフィーチャーを開発し、ユーザーの価値をより迅速に高め、定着化や成長を促進することができます。つまり、プロダクト開発のあらゆる段階で、顧客を巻き込むことが重要なのです。

4. 他のチームにも参加してもらう

プロダクト主導の組織に欠かせないのはコラボレーションです。そのため、プロダクト主導の成長戦略がサイロ化したり、単一のチームだけが関与したりするようなことは避けなければなりません。4名の専門家は、プロダクト主導の成長を目指す部門横断的な専任チームを作ることを推奨しています。このチームにはマーケティング、セールス、プロダクト、カスタマーサクセスなど、ビジネス全体のチームの代表者が集結します。こうすることで、複数の人(や部門)がオーナーシップを体現し、成長戦略の抜けを確実に防ぐことができます。

また、中核となるグロースチームは、進行中のすべてのプロダクト主導の施策について、組織の他のメンバーにも周知徹底させる必要があります。「グロースリーダーとして、教育することも仕事のひとつです。プロダクト主導の成長には大きな期待が寄せられており、その期待感を全社で維持することが重要です」と、Nichole Maceは説明しました。 

会社の他のメンバーを巻き込むもう1つの方法は、データを使用することです。Scott Brinker氏は、プロダクトデータをセールスやマーケティングの既存のオートメーションに取り入れることを推奨しました。プロダクトデータは会社全体の共通言語として機能し、カスタマーサクセス、セールス、マーケティングなどのチームがどのように顧客を絞り込み、コミュニケーションをとるかについての情報を提供できます。

MaceとBrinker氏、Hutchinson氏、Townshend氏のディスカッションの全編は、以下の録画(英語)をご覧ください。