ベストプラクティス

プロダクトデータを最大限活用する方法

2020年7月30日 公開

この記事を読んでいる方は、おそらく「データ主導の意思決定」という考え方に馴染みがあると思います。あなたがもしプロダクトマネージャーなら、日々これについて思案を巡らしていることでしょう。しかし、データを収集して分析することはできても、プロダクト開発ライフサイクルの全フェーズを通してデータを最大限に活用するとなると、なかなか難しいのが現状ではないでしょうか。 

プロダクトマネージャーの手元は膨大なデータで溢れかえっています。このようなデータの海から拾い集めたインサイトは、最高の顧客体験を創出するうえで極めて重要なものとなります。もし皆さんが1日の大半の時間をデータの収集とそのデータを活用したプロダクトの改善に費やしているとしたら、その情報の価値を最大限に活かせているかどうかを確認することに大きな意味があります。 

その一助となるべく、私たちは最新の電子書籍において複数の業界エキスパートにインタビューを実施し、プロダクトマネージャーがデータを活用する際に見落としがちなポイントを探りました。専門家らの意見の概要を以下にご紹介します。

1. 顧客チャーン(解約)の分析を行う

顧客ロイヤルティの最も高いユーザーの更新理由を理解することは極めて重要ですが、最も価値のあるインサイトが、プロダクトから離れる決断をした顧客から得られることも少なくありません。プロダクトマネージャーは顧客チャーンに関するデータをモニタリングすることで、ユーザーの行動をより適切に分析でき、プロダクトを解約したユーザーの傾向を把握できるでしょう。

Tray.ioのプロダクト責任者であるBella Renney氏は、このポイントを次のように説明しています。「私がより関心抱くのは、当社のツールを選択して実際に使用したうえで、結果的にそこに価値がないと判断した顧客です。なぜ解約に至ったのか?この情報こそが、プロダクトマネージャーが優先順位を決定するために得られる最も重要なデータであると考えます。」 

もちろん、顧客チャーンに対処する必要が全くないことに越したことはありませんが、その損失を無為にしてはなりません。同じ間違いを繰り返して貴重なリソースを無駄にしないためにも、顧客が離れていった理由について時間を割いて理解するようにしましょう。 

 

2. 小規模な実験を優先する

やみくもにプロダクトを世に送り出し、最良の結果を期待する時代は終わりました。昨今においては、ユーザーのフィードバックと反応に基づいて、常にプロダクトを変化させることが求められます。結局のところ、ユーザーに使い続けてもらわないことには、プロダクトには何の意味もありません。

定評のあるプロダクトであっても、そのプロダクトライフサイクル全体を通してテストと実験を行うことは不可欠です。GoogleのプロダクトマネージャーであるManosai Eerabathini氏は、ユーザー体験を継続的に微調整することを推奨しており、そうした活動こそが実はプロダクト全体に最も大きな影響を与え得ると考えています。Eerabathini氏は、効果的な実験戦略の例としてNetflixについて次のように言及しています。「Netflixはホームページの最適化において、データ主導型の戦略を大変重視しています。実に幅広いユーザーベースを持つ同社の大規模なプロダクトでは、プロダクトの小規模な変化こそが、ユーザーのプロダクト使用における極めて大きな変化につながるのです。」

プロダクトの大規模な変更(それも重要ですが)だけに注力するのではなく、データを活用して、小規模なアップデートの機会を見逃さないようにしましょう。このような更新に対する顧客の最初の反応や使用状況をデータ分析により確認することで、ユーザーが価値を見出す機能を開発するための重要なインサイトが得られるはずです。

3. ユーザーについて可能な限り詳しく知る

顧客との良好な(そして永続的な)関係を確保する1つの方法は、顧客のプロダクト体験を可能な限りパーソナライズすることです。しかし、プライバシーに対する懸念が高まるにつれ、プロダクトを個々のニーズに合わせてカスタマイズするうえで役立つ情報の共有をユーザーが回避する傾向はますます強くなっています。 

Rapid7のシニアデータストラテジストであるTravis Turney氏は、顧客に関する情報を収集する際の最も重要なタイミングは、オンボーディングの瞬間であると述べています。同氏の経験では、プロダクトを使い始めてしばらく経ってからよりも、プロダクトを最初に使用したタイミングの方が、ユーザーは情報の提供に抵抗がない傾向があるようです。

たとえば、アプリ内アンケートなどを使用して、各ユーザーの社内での役割やプロダクトへのニーズを特定しておけば、各ユーザーにとって最も価値の高い機能を紹介することができます。また、貴社のCRMに保存されているデータとプロダクトアナリティクスシステムを同期させることで、ユーザーの属する業界やアカウントの更新日も適切に把握できます。こうした情報をオンボーディングのタイミングで収集することにより、パーソナライズされたプロダクト体験を初日からユーザーに提供できるようになります。

4. 定性的データと定量的データを統合する

絶え間なく流入してくる定量的な情報に対処しているうちに、簡単に全体像を見失ってしまうことがあります。これらの数値データの背景には必ず、貴社のプロダクトに関する重要なインサイトを提供できる生身の人間がいます。しかしそのようなインサイトは、必ずしも1つのデータポイントで発見できるわけではありません。だからこそ、定量的データと定性的データの適切なバランスをとることが非常に重要なのです。Nielsenのプロダクト担当SVPであるGreg Bayer氏は、「優れたプロダクトマネージャーは、これら両方のデータを均等に融合させます」と指摘しています。 

プロダクトに対する顧客体験を完全に理解しようとするなら、顧客フィードバックおよび自由回答形式のアンケートから得た所見と、収集した定量的データとを組み合わせる必要があります。Amazon Web ServicesのシニアプロダクトマネージャーであるViraj Phanse氏は、プロダクトマネージャー自身が顧客に連絡を取り、顧客の抱える課題や懸念事項を直接聞き出すことを推奨しています。ユーザー体験に触れる機会が多いほど共感力が高まり、ユーザーが実際に体験している状況やプロダクトに求めていることを肌で感じられるようになります。