いくら技術やユーザーの購入方法が高度になっても、顧客の支持は口コミによるところが大きいのです。多くのビジネスリーダーやテクノロジリーダーは、新しいツールの購入や多額の投資を行う前に、同業他社の視点に目を向けます。同業他社の経験を参考にすると、どのソリューションが本当に期待に応えてくれるかがわかります。このようなフィードバックを同業者から直接聞くことで、見込み客がマーケティング関連の資料を使用するときの心理的ハードルが下がります。
プロダクト主導型戦術は、優れた顧客体験をサポートするだけでなく、社会的証明を得るためにも非常に有効です。また、顧客がプロダクトについて言ったり共有したりすることは、企業がコントロールできないことがほとんどですが、最も満足度の高い顧客からそのようなデータポイントを収集し、顧客主導の積極的な支持を促進するために、企業が取ることのできる方法があります。
社会的証明(ソーシャルプルーフ)とは何か
マーケティングにおいて社会的証明とは、ユーザーや顧客から収集した、組織やプロダクトに関する体験の証拠で、最終的には企業がそれを使って自社またはそのサービスを販売します。昔ながらの口コミは、同僚や仲間との生きた会話の中で有機的に共有される社会的証明の一形態です。しかし、社会的証明は、次のような他の形式でも文書化することができます。
- レビュー(サードパーティのサイトに掲載される場合もあります)
- お客様の声
- 顧客の成功事例
- プロダクト評価スコア
- ユーザーの声の引用
- ソーシャルメディアへの投稿、いいね、シェア
- 推薦
社会的証明は、企業主導のマーケティングメッセージとは異なり、顧客自身から発信されるため、説得のための強力なツールです。プロダクトの実際のユーザーから直接提供されるため、本質的に偏りがなく、従来のマーケティングや広報(PR)活動にありがちな「空回り」が排除されます。また、社会的証明により、見込み客は自分と同じような、自分が現在直面しているのと同じような決断に直面した人の体験を聞くことができます。
社会的証明は、戦略的に使用することで、マーケティング担当者がコンテンツとキャンペーンを強化するのに役立つ優れたツールです。これは、企業の主張を検証する新たなレイヤーを追加するもので、見込み客に企業との連携やプロダクトの使用体験を直接見てもらうことができます。また、既存顧客が各自の視点を共有することで、企業のストーリーをより確かなものにすることができます。
社会的証明は、組織を支持する口コミの連鎖を培うのに役立つこともあります。企業のウェブサイトやマーケティング資料に社会的証明があると、ユーザーの目から見て、その企業の信頼性が一気に高まります。見込み客は購入前にこうしたシグナルを探すことが多く、既存顧客は企業のマーケティング活動を通じて自分たちの声が取り入れられ、重視されることを快く思っています。
社会的証明を収集するためのプロダクト主導型戦術
プロダクト内で顧客フィードバックやお客様の声を募集することは、社会的証明を確保するための非常に効果的で信頼性の高い方法です。このような情報をプロダクト内で求めることのもう1つの利点は、状況に即していることです。顧客のプロダクトでの直接的な体験は、そのプロダクトについての発言に大きな影響を与える可能性があります。というのも、その時顧客のすぐ目の前にあり、トップオブマインドのプロダクトだからです。
社会的証明に対するプロダクト主導のリクエストにより、マーケティング担当者は戦略的かつ的を絞ったアウトリーチができるようになります。こうすることで、レビューや感想を依頼する相手を選ぶことができ、最も満足感が高く成功した顧客のストーリーだけを強調することができます。マーケティングチームが社会的証明を求めるための手段としてプロダクトを使用する方法をいくつかご紹介します。
顧客の成功事例
最も満足感が高い顧客は最高のブランド支持者になります。そして多くの場合、そのような顧客は自分のストーリーを共有し、他の組織が同じような成功を収めるのを助けたいと熱望しているのです。マーケティング担当者は、カスタマーサクセス(CS)チームを活用して、一般向けの顧客の成功事例の候補となりそうな顧客を特定することができます。一般に、そのプロダクトの顧客またはユーザーとして十分な期間、積極的に使用し、意味のあるしきい値に達している人たちの事例が、最高のお客様事例となります。そのようなお客様は、プロダクトを使用した結果として共有できるような、強力で目に見える成果も持っているはずです。
プロダクトアナリティクスは、マーケティング担当者がお客様事例の候補を特定する場所としても役立ちます。利用率、定着率、リテンションが高いことは、顧客満足度の良い指標ですが、顧客がブランドに深く関与し、情熱を持っているかもわかります。プロダクトの主要な機能を頻繁に使用し、他のユーザーからのフィードバックやリクエストに定期的に対応し、組織内やネットワーク内でプロダクトやブランドの声高な提唱者となっている顧客を探してください。
理想のお客様事例候補が決まったら、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)に紹介を依頼したり、アプリ内のガイドを利用して、プロダクトを使っている間にコンタクトを取ります。アプリ内ガイドで使用するメッセージは明確にして、何を求めており何を期待しているかを顧客が理解できるようにします。また、面談の日程調整をできるだけ簡単にすると、参加への障壁がさらに低くなります。カレンダースケジューリングツールとのインテグレーションは、このプロセスをシームレスにし、マーケティング担当者がお客様事例関連のワークフローをより簡単に管理、拡張するための素晴らしい方法です。
レビューとお客様の声
レビューとお客様の声は成功事例に似ていますが、一般的にはるかに短く、マーケティング担当者が顧客にインタビューしてそのストーリーを収集することを条件としていません。また、検証済みのユーザーレビューやお客様の声を一括して収集するサードパーティのサービスもあり、購入者は偏りのないプロダクトレビューを簡単に閲覧し、より簡単にベンダーを比較することができます。
顧客のレビューやお客様の声を求めているマーケティングチームにとって、ここでもアナリティクスが役に立ちます。行動や使用状況を調べて、プロダクトから最大の価値を得ていると思われる顧客やユーザーを特定します。一般的には、プロダクトを頻繁に利用し、自分のサブスクリプションの範囲内で利用可能なすべての機能を活用している人たちが該当します。該当するユーザーをアプリ内ガイドで設定して、簡単な感想を求めましょう。送信した内容がどのように活用されるかを説明する文言は、できるだけ明確にしてください。たとえば、レビューが公開されるかどうか、データがどのように使用され保存されるかを説明し、該当する場合はレビューがサードパーティによってホストされるかどうかを明確に示します。
一般論として、このような感想をリクエストするガイドは、ユーザーがワークフローを完了した後など、ユーザーが行おうとしている作業の邪魔にならない瞬間にのみ表示する必要があります。また、誰にレビューを依頼するかについても戦略的に考えましょう。一般的に、意思決定を行う立場にある人(ディレクター、副社長、経営幹部など)からのレビューは、個人の貢献者からのレビューよりも見込み客にとって説得力のあるものになるはずです。最後に、1人のユーザーにレビューや感想を依頼する回数に注意してください。ガイドを常に無視するユーザーは参加する気がない可能性が高いので、何度も依頼して相手を困らせる(結果的に相手をイライラさせる)ことはしないほうがよいでしょう。
アプリストアの評価
アプリストアの評価は、モバイルプロダクトにとって重要な社会的証明となります。評価の高いアプリは検索結果で上位にランクされるため、ユーザー候補や見込み客に表示される可能性が高くなります。同様に、アプリのダウンロード回数も、ランキングの持続性に影響を与えます。このように、アプリストアの評価は、プロダクトが自身をマーケティングするのを助ける自己永続的なサイクルになります。
アプリストアでの高い評価は、そのアプリが価値ある目的を果たし、優れた体験を提供していることを他のユーザーに明確に示すものです。アプリストアの評価には、一般的に定性的なレビューも伴います。これらは、見込み客やユーザーにとって、インサイトや展望のもう1つの情報源となり、定量的な評価にコンテキストを加えます(さらに、プロダクトチームにとっても素晴らしいフィードバックの源となります)。アプリの新しいバージョンがリリースされるたびにアプリストアの評価を継続的に追跡することも、プロダクトの新しいバージョンでユーザーが気に入っている点と気に入らない点を把握するための優れた方法です。
アプリストア内で評価を求める最善の方法は、ユーザーがアプリに没頭している状態で、アプリ自体の中で評価を求めることです。ほとんどの企業では、アプリ内ガイドでユーザーに1つ星から5つ星の評価を求めるシンプルなプロンプトを表示しています。このプロンプトに、コメントやフィードバック用のフィールドを用意していることもあります。このガイドを表示するタイミングは特に重要で、受け取る評価に大きな影響を与える可能性があります。メッセージは、論理的で邪魔にならないタイミングでのみ表示するように設定してください(例:ユーザーがタスクを完了しようとしている最中は表示しない、など)。
投票調査とアンケート
投票調査やアンケートは、組織のフィードバックやお客様の声(VOC)チームの管轄であることが一般的ですが、マーケティング担当者は自社のキャンペーンやプロモーションに活用することもできますし、そうする必要があります。アプリ内で配信される1~2問の簡単な投票調査は、継続的かつスケーラブルな方法で顧客のセンチメントを測定する優れた方法です。また、プロダクトに関する決定の検証やマーケティングプログラムと資料の強化に活用できる、社会的証明を迅速に収集する方法としても優れています。
たとえば、マーケティングチームとプロダクトチームが共同でアプリ内投票をリリースし、参加ユーザーにベータ版の特定の機能についてどう思うかを尋ねることができます。プロダクトチームはその反応をレビューして必要に応じて機能を改善し、マーケティングチームは新機能を宣伝するマーケティング資料で肯定的なスコアを社会的証明として活用し、一般提供(GA)の準備をすることができます。
ソーシャル共有とエンゲージメント
マーケティング担当者は、ブランドに関する会話を促進するために多くのチャネルを使用しています。アプリ内ガイドは、そのような外部チャネルについて顧客に知らせ、プロダクト以外のコミュニティへの関与をさらに促すための素晴らしい方法です。
たとえば、アプリ内のガイドを使って、会社のLinkedInやTwitterのページで投稿に反応した顧客向けのプロモーションやプレゼント企画を紹介することができます。重要なマイルストーン(認定コースの修了やプロダクトの新たな習熟度への到達など)を祝うアプリ内ガイドを活用し、顧客が簡単に投稿して達成のニュースを広められるようなソーシャル共有ボタンを設置することもできます。また、モバイルアプリ内に「共有」ボタンを組み込んで、ユーザーが同僚や仲間にプロダクトを直接紹介したり、自分のソーシャルメディアページに投稿したりするのを簡単にすることも検討してください。
調査とプロダクト検証
前述した他の社会的証明ほど派手な目的はありませんが、調査やユーザー体験テストのためにプロダクト内で集められた顧客の意見は、組織全体にとって社会的証明と検証のための貴重な情報源となります。
マーケティング担当者は、プロダクトチームやリサーチチームと連携して、市場に投入する前のプロダクト名や新機能に対する要望など、ユーザーからの意見を収集するための戦略を立てることができます。この情報は、全社的な意思決定の妥当性を確認し、顧客が本当に重視しているものを明らかにし、新しいプロダクトが反響を呼ぶようにマーケティング戦略やプロモーション戦略を導くのに役立ちます。
このような初期段階の意見を顧客やユーザーに求めることは、強い信頼の現れとなります。これは、企業が顧客フィードバックを大切にし、ユーザーの意見を尊重し、ユーザーの成功に役立つプロダクトや機能の構築に投資していることを示すのに役立ちます。