ベストプラクティス

プロダクトマーケットフィットを発見・理解・測定するためのクイックガイド

2021年2月19日 公開

プロダクトマーケットフィットは、恋に落ちるのとどこか似ています。その存在を見つけるやいなや、直感が確信に変わるところ。また、企業によって少しずつプロダクトマーケットフィットの解釈が違う点や、その成功に多大なる努力が必要な点もまた、恋愛と似ている気がします。あながち的外れなたとえ話ではないのではないでしょうか。

お決まりのたとえ話はさておき、プロダクトマーケットフィットの達成は、テクノロジー企業が着実に成長するための重要な要素であると広く考えられています。しかし、その「方法」はそれほど単純ではありません。先日のウェビナーでは、Zendeskのプロダクト担当VPであるMike GozzoとPendoの共同創業者であるEric Boduchという2人の業界の専門家による協力を得て、プロダクトマーケットフィットの謎を読み解くことに挑みました。

プロダクトマーケットフィットを発見・測定するためのベストプラクティスを掘り下げる前に、まずはその前提として、プロダクトマーケットフィットがそれほど重要視される理由を探りましょう。

プロダクトマーケットフィットが重要な理由

プロダクトマーケットフィットの定義はさまざまですが、特にわかりやすいのは、顧客とプロダクトの方向性が一致しているかどうかと、顧客が自社の営業・マーケティングを担う人に転じているかどうかの2点です。たとえばSlackの場合、早い段階からユーザーインタラクションの快適さに注力し、プロダクトの問題点に積極的に対応していました。この快適さにより、顧客が口コミによってマーケティングを担う推進力となり、このプロダクトの定着化促進に(そして同プロダクトの爆発的成長に)寄与しました。

プロダクトマーケットフィットとは、貴社のプロダクトによって特定の問題を解決できることを示すことです。どんなに潜在市場が大きくても、その点が実現されなければ価値がありません。プロダクトマーケットフィットはプロダクトの拡大と成長の重要な出発点となるため、多くのベンチャーキャピタリストは、このエビデンスを持たない企業には投資を行いません。考えてもみてください。プロダクト自体の存続を可能にし、理想的には利益を生み出せるだけの十分な潜在市場を持つことをそもそも証明できない状態で、イノベーションや戦略的施策にリソースを投入することを正当化できるでしょうか?

プロダクトマーケットフィットを見据えて行動する際には(またはその再獲得を目指す際には)、以下の5つのベストプラクティスを意識しましょう。

1. プロダクトマーケットフィットは1回限りの取り組みではない

プロダクトマーケットフィットについて覚えおくべきことを1つ挙げるなら、プロダクトマーケットフィットとは、やることリストにチェックを付けていくように1度きりで完結するものではないということです。それどころか、プロダクトマーケットフィットを失う可能性すらあり、自社が成長していく過程でその再評価を行う必要があることも少なくありません。Netflixを例に挙げてみましょう。同社は郵送によるDVDのサブスクリプションサービスから始動しましたが、プロダクトマーケットフィットを維持するため、市場ニーズの変化に合わせてプロダクトを調整し、現在のようなストリーミングプラットフォームへと変化を遂げました。プロダクトマーケットフィットの達成の瞬間について語られることは多いですが、これが現在進行中のプロセスであることを忘れないようにしましょう。

2. プロダクトマーケットフィットの発見には多くの要素が関係する

プロダクトマーケットフィットの定義がさまざまであるのと同様に、その発見にもあらゆる要素が関係しています。たとえば、プロダクトの特徴や機能性を繰り返し伝えたり、価格設定を調整したり、さらにはプロダクトとその価値提案を一新したりすることも必要です。しかし最も重要なことは、常に顧客からフィードバックを収集し、それを意思決定の判断材料にすることです。また、プロダクトマーケットフィットの達成は、プロダクトの開発チームのみの責任ではなく、企業全体で取り組むべきことです。たとえば、見込み顧客や顧客に対応するチームは、貴重なフィードバックを獲得できる絶好のポジションにいます。このように、社内の誰もがプロダクトマーケットフィットの達成の当事者であると感じられるよう意識づけることが大切です。

3. プロダクトマーケットフィットはあらゆる形で表出する

確かに、プロダクトの考案者やプロダクトリーダーがプロダクトマーケットフィットを実感することが多いのは事実ですが、そこには注目すべき兆候がいくつか存在します。たとえば、以下のような兆候です。

    • サーバーを増設する(プロダクトを作る) たびに即座に使用量が増加(顧客が購入)する
    • 顧客がマーケティングに寄与している(プロダクトを紹介している)
    • 投資家や報道機関などの社外からの問い合わせが増加する
    • マーケティング活動をしていないのにプロダクトが急成長する

これらは達成すべき要件というよりも、注視しておくべき兆候として捉えるとよいでしょう。同様に、上記の兆候が1つ以上見られるからと言って、必ずしもプロダクトマーケットフィットを達成しているとは限りません。 

4. 測定には定量的指標と定性的指標の両方が求められる

プロダクトマーケットフィットの測定においては、定量的な指標と定性的な指標の両方が重要になります。定量的な指標では、顧客の獲得やアクティベーション、リテンション、チャーン、収益などの状況を追跡します。これらの指標とバランスをとりながら確認していくのが定性的な指標で、顧客からのフィードバック、NPS、紹介やレビューなどが該当します。また、今後このプロダクトを使用できなくなるとしたらどう感じるかを顧客に(アプリ内アンケートなどで)尋ねてみるのも効果的です。こうした質問は、プロダクトを通じて顧客の問題を本当に解決できているのか、それとも、単にあれば嬉しいというレベルなのかを測るうえでも役立ちます。

5. 顧客フィードバックが絶対的に重要である

このウェビナーで何度も言及されたのは、プロダクトマーケットフィットを達成する過程での顧客フィードバックの重要性でした。つまり、プロダクトの顧客は誰なのか、顧客の抱える課題は何なのか、顧客のプロダクトの使用方法はどのようなものなのかを理解する必要があるということです。その一方で、このフィードバックの価値は、さまざまな要素によって変化することに留意すべきです。たとえば、使用頻度もそのような要素の1つです(フィードバックの回答者がプロダクトにほとんどログインしていない場合、そのリクエストに優先的に対応することは妥当ではないでしょう)。また、フィードバックを提供した顧客がプロダクトの無料ユーザーなのか有料ユーザーなのかといった違いも、フィードバックの価値を左右する要素に含まれます。

プロダクトマーケットフィットに関するEricとMikeのディスカッションの全容は、以下のウェビナーの録画をご覧ください(英語)。