企業が成長するにつれ、サイロが生まれ、かつて効果的であったプロセスが崩壊し、効率が低下するのはほぼ避けられないことです。成長に伴う痛みは避けられませんが、プロダクト主導型の企業には、新しい市場に参入して従業員を増やし、追加となるプロダクトを開発しながら、大きな後退を避け、実際に効率を高める方法があります。

これらの企業はプロダクトオペレーションに目を向けています。プロダクトチームと組織の他の部門をつなぐ重要なコネクターとして、プロダクトに関するアライメント(方向性の一致)、コミュニケーション、プロセス改善を目的としたオペレーション部門です。企業のプロダクトオペレーション部門は、一人である場合もあれば、チーム全体である場合もありますが、通常、ツール、データ、実験および戦略の4つのカテゴリに分類されます。

プロダクト主導型企業は、プロダクトによってカスタマージャーニーの各段階を推進するため、企業はプロダクト体験が最適化されているか、この負荷を引き受ける準備が整っているかを確認する必要があります。プロダクトオペレーションは、プロダクトマネージャーの管理業務を軽減するだけでなく、プロダクトに関する知識とプロセスを組織全体に提供し、プロダクトを業務の中心に据えることを支援します。


プロダクトオペレーションはどのような問題の解決に役立つか

プロダクトオペレーション部門の構成や目標は企業によって異なりますが、プロダクトオペレーションの価値を、企業のコラボレーションの改善と、効率の向上の2つの観点から考えることが有効です。具体的には、プロダクトオペレーションを導入することで、組織が解決に着手できる重要な課題がいくつかあります。 

ソフトウェアプロダクトを扱う企業が直面する最大の課題のひとつは、一貫したデータとプロダクトインサイトの欠如です。プロダクトマネージャーは、プロダクトデータを積極的に収集、整理、分析する時間がないかもしれません。また、社内の他のメンバーは、自分でその情報にアクセスできない可能性があります。そのため、プロダクトオペレーションは通常、複数のソース(プロダクト使用状況、ネットプロモータースコア、顧客センチメントなど)からデータを収集し、それを整理し、社内のチームが簡単にアクセスできるようにすることを任務としています。

また、顧客フィードバックプロセスのギャップにより、この定性データを最大限に活用することができない企業もよく見受けられます。顧客フィードバックが複数の場所に分散し、簡単に集約して見ることができない場合、重要なフィードバックがブラックホールに入り、プロダクトチームにまったく届かなくなる可能性があります。企業がプロダクトオペレーションの専門部門を置く場合、この担当者やチームがすべての顧客フィードバックチャネルを管理し、組織全体に対応する強固なフィードバックプログラムを構築することがよくあります。こうすることで、リクエストやフィードバックの漏れがなくなり、必要な情報が常にプロダクトオーナー、カスタマーサクセスマネージャー、リーダーシップといった適切な関係者に届くようになります。

また、多くのプロダクトチームが抱える課題として、無駄なツールや使われていない(あるいは十分に活用されていない)システムがあります。これらはお金をドブに捨てているようなものだと言っても過言ではありません。プロダクトオペレーションチームは、プロダクトの技術スタック全体を管理し、ツールを最初に導入する際に(そして継続的に)他のチームを訓練し、組織がその投資の価値を完全に実現できるようにする必要があります。

プロダクトオペレーションの技術スタック

プロダクトオペレーションは、プロダクトチームの技術スタックを管理する役割を担っているため、それを最大限に活用するためのツールやシステムがあります。プロダクトオペレーションが組織全体の効率化を推進するためには、まず自部門の技術スタックから効率化する必要があります。

ここでは、プロダクトオペレーションチームが活用できる主なツールを紹介します。

  • プロダクトアナリティクス:プロダクトオペレーション担当者はデータを駆使して仕事をしているため、この仕事を支援するプロダクトアナリティクスプラットフォームが必要です。プロダクトアナリティクスを使うことで、プロダクトの使用状況を追跡し、重要な指標のダッシュボードを作成して、そのデータを社内で利用できるようにします。
  • アプリ内ガイド:プロダクトのデータを収集し管理するだけでなく、プロダクトオペレーションがそのデータに基づいて行動を起こせることも重要です。プロダクトオペレーションは、プロダクトチーム、マーケティングチーム、カスタマーサクセスチームと密接に連携し、アプリ内ガイドツールを活用して、アプリ内オンボーディング、定着キャンペーン、ユーザーリサーチなどのプログラムを推進する必要があります。
  • アカウント管理:プロダクトオペレーションは、アカウント管理ツールを使用して、プロダクトの使用状況データが、プロダクトの市場投入を担当するチームに確実に届くようにする必要があります。プロダクト分析データをこのツールに統合することで、プロダクトオペレーションは営業チームやカスタマーサクセスチームが即座にプロダクトデータへにアクセスできるようすることが可能です。また、アカウントデータを自部門の業務に活用することで、ユーザーセグメントの構築や、よりターゲットを絞ったアプリ内ガイドの作成が可能になります。
  • 課題とプロジェクトの追跡:プロダクトオペレーションにとって、エンジニアリングチームが何に取り組んでいるかを常に明確に把握することは重要であり、課題とプロジェクトの追跡ツールは極めて不可欠です。機能強化のバックログ、プロダクトのバグ、スプリントのスコープ作業などの可視化により、プロダクトオペレーションは作業の優先順位をつけ、リリースに十分間に合うように準備することができます。
  • リリース管理:プロダクトオペレーションがコラボレーションと効率化の推進に役立つ主な分野のひとつが、リリースプロセスです。プロダクトオペレーションがリリース基準を定義し、複数のチームの関係者をまとめる際、リリース管理ツールはその取り組みを拡張し、効率化するのに役に立ちます。

プロダクトオペレーションは効率化にどのように役立つか

プロダクトオペレーションの専門知識が最も必要とされる部分については、企業ごとに優先順位が異なります。新しいプロダクトのリリースに関するプロセス構築に重きを置いている人もいるかもしれません。あるいは、部門間のコミュニケーションチャネルや、プロダクトの知識を拡大するための仕組みをより良く(あるいは新しく)確立する必要があるかもしれません。いずれにせよ、プロダクトオペレーション部門は、ビジネスのさまざまな分野に関与している可能性が高いため、全社的な効率化を推進する可能性は高くなります。

ここでは、プロダクトオペレーションがプロダクト主導型組織全体にわたって効率性を高めるためのさまざまな方法を紹介します。

プロダクトツールとシステムの管理

その他のオペレーション部門(営業部門、マーケティング部門、DevOpsなど)は、通常、各チームのツール調達、統合プロセス、技術スタックの継続的なメンテナンスのオーナーシップを持ちます。プロダクトオペレーションも同様で、確立された部門である場合は、テクノロジーの選択、ベンダーとの関係の管理、より広いチームへのツールの管理など、プロダクトチームの技術スタックに責任を負います。

一般的なツール管理だけでなく、プロダクトオペレーションは、チームメンバーがシステムを適切に使用し、最大限に活用して、確立されたベストプラクティスを活用できるようにするための支援も行います。これにより、プロダクトチームがより効率的かつ効果的に作業できるようになり、プロダクト主導型の企業では、組織内のほぼすべてのチームに波及効果がもたらされます。

データの一元化と分析

プロダクト主導型組織は、定量的・定性的データの活用によって意思決定を行い、あらゆるステージで顧客ライフサイクルを最適化します。プロダクトオペレーションは、すべてのデータを一か所に集約して分析し、インサイトを共有し、社内の他の部署もそのデータを使用できるようにすることを担当する単一の存在です。これにより、プロダクトマネージャーの作業が軽減されるだけでなく、ロードマップの決定やマーケティングキャンペーン、営業活動などにプロダクトデータを活用しようとするすべての人が効率化を図ることができます。これらのチームには、このデータにアクセスするための場所を知っており、追加の支援やインサイトが必要な場合に頼れるリソース(プロダクトオペレーション)があります。

プロセスの合理化と自動化

プロダクトオペレーションは、社内のさまざまなチームと連携しているため、新規・既存のワークフローのプロセスを構築することが主なタスクのひとつとなっています。そして、これらのプロセスをより多く自動化できれば、より効果的です。実際の例をご紹介します。

  • 自動更新される共有ダッシュボードの作成など、プロダクトデータを社内で積極的に共有するためのワークフローと標準的な手順を確立する
  • 顧客フィードバックやリクエストをプロダクトチームに伝達するプロセスを確立し、これらの定性的インサイトを適切に文書化する
  • 実験の重複がなく、実験から得られるデータがクリーンで正確であることを保証する方法で、プロダクト実験のプロセスを実行する
  • チームメンバーがいつでもアクセスできるオンデマンドリソースの作成などの、新しいプロダクトや機能に関する社内関係者のトレーニングを行う

アプリ内コミュニケーションのガバナンス

プロダクト主導型の企業では、プロダクトは顧客のコミュニケーションチャネルとして選択されます。また、企業全体のチームがそれぞれの取り組みをサポートするためにアプリ内ガイドを作成したいと考えるのは良いことですが、組織にはアプリ内体験を全体として管理する方法が必要です。 

アプリ内のコミュニケーション活動を管理する部門横断的なチームを設置することが最良の戦略です。また、プロダクトオペレーション担当者やチームがいる場合は、ここでも重要な役割を担います。プロダクトデザイン、プロダクトマーケティング、ユーザー体験(UX)などのチームと連携して、プロダクトオペレーションはアプリ内ガイドのリクエストの提出方法、リクエストのレビュー方法(もしくは頻度)、アプリ内ガイドの構築と実装方法に関するプロセスの作成を支援します。

プロダクトオペレーションは、これらのプロセスにおける特定のステップ、たとえば、すべてのガイドのコピーの最終承認や、セグメンテーションとターゲット設定を担当することもあります。文書化はすでにその役割の一部であることが多いため、プロダクトオペレーションは、これらのガバナンスの実践に関するドキュメントを作成し、配布することができるかもしれません。このような仕組みを追加することで、社内の他のメンバーがアプリ内ガイドを活用できるようになり、ユーザーが最高のプロダクト体験を得られるようになります。


プロダクトオペレーションの開始にあたって

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