KDDI、Pendoを活用して店舗向けシステム利用者の デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進

KDDI at a glance
課題
- 商材・サービスの拡大に伴い店舗受付システムのUI・ワークフローが複雑化。シ
- ステム維持管理の負担が増大。
接客時間が長時間化し、店舗業務の効率化が求められていた。
Pendoの使い方(Pendo'ing it)
- アナリティクス機能の活用でシステムの使用状況データの収集、ユーザー行動を視覚化。画面遷移のビジュアルデータの分析により、実際の使用状況に基づく意思決定が可能に。
- アプリ内ガイド機能の実装で契約に関するガイドラインなど、重要情報をシステム内で店舗へ直接提供。システムアップデート情報なども効率的に伝達。
結果
データに基づく意思決定の実現により、全社方針でもあるDX推進に貢献。
- Pendoアナリティクスの客観的なデータ分析により、機能の必要性に関する議論がより建設的になった。新機能の効果検証も容易にした。
- アプリ内ガイド機能により、アプリのバージョンアップ実施率が40%から57%に向上。マニュアルに頼らないシンプルな告知で、店舗スタッフ、KDDI双方の負担を軽減。
目次
実店舗での体験は、ブランドに対する印象を大きく左右する。優れた顧客体験は、人々を熱心なファンへと変えることができる一方で、ネガティブな体験はフラストレーションを引き起こすことにもつながる。通信業界のリーダー企業であるKDDI株式会社(以下 KDDI)は、同社の店舗受付システムの徹底的な改善を通じて、テクノロジーの力で顧客体験の一層の向上に取り組んでいる。
世界70都市以上、110拠点以上でグローバルに事業を展開するKDDIは日本を代表する通信事業者だ。KDDIは「サテライトグロース戦略」を推進しており、5G通信、Data Driven、生成AIを中心にお客さま接点である通信基盤を生かして成長領域であるDX(Digital Transformation)、金融、エネルギーといった付加価値サービスの提供で事業展開を行っている。また、携帯電話ブランド「au」を中心とした通信サービスを取り扱う店舗を重要な顧客接点だと捉え、顧客一人ひとりの状況に合ったサービスを提案するためDXを推進している。店舗ではサービス契約の手続き、デバイスの販売、カスタマーサービスを提供しており、KDDIはお客様との良好な関係を維持・強化することが企業の将来にとって重要だと考えた。
◼️Pendoが店舗スタッフの生産性を向上させることを期待
auショップや家電量販店をはじめとしたKDDI商材を取り扱う店舗では、店舗スタッフはKDDIの店舗受付システムが搭載されたタブレットを使用しており、店頭サービスの簡素化と迅速化に貢献している。このシステムは全国で約10,000以上の拠点に導入され約40,000台のデバイスで利用されており、日々の業務に不可欠なものだ。
しかし商材やサービスが拡大するにつれ店舗受付システムのユーザーインターフェース (UI)やワークフローが複雑化したことで接客時間が長くなり、店頭での効率化の妨げにもなることが懸念となった。そこでKDDIでは店舗スタッフと顧客とのやり取りにおいてシステムがどの部分で摩擦を生んでいるのか、利用状況を分析することを決断した。
◼️システム開発の意思決定をデータで効率化
システムの改善を実施する際に、企画部門は現場からの定性的なフィードバックを基に改善要望をシステム部門にリクエストしていた。しかし、定量的なデータを測ることが困難だったことからリクエストに優先順位を付けることが難しく、実装後の成果を把握することも非常に困難な状況だったという。
KDDIのシステム部門マネージャーである中西氏は、次のように振り返る。
「販売実績のデータは把握できていましたが、店舗スタッフが実際にシステムをどのように活用しているのかという点は把握できていませんでした。また、システムログが複雑で膨大なため、データ分析も効率的とは言えませんでした」
中西氏のチームは、さまざまなシステム環境におけるチャネルの分析にPendoアナリティクスの利用を開始した。これによってシステムの利用状況データの収集とユーザー行動の視覚化がより迅速かつ容易になり、伝え聞いた情報ではなく実際の利用状況データに基づいて、システムのアップデートや店舗スタッフのオンボーディングに関する意思決定を行うことが可能になった。
◼️アナリティクスを活用して効果的な開発を実施。新機能の効果検証も迅速に
Pendoアナリティクスを導入したことで、KDDIは業務改善のポイントを特定できるようになった。そのひとつが、顧客の申し込み時における画面遷移のビジュアルデータの分析だ。
店舗スタッフが顧客の申し込み情報を入力する際、店舗受付システム内ではさまざまなパターンの画面遷移に沿って業務が進められていた。受付時の画面遷移を理解することは、業務プロセスの効率性を評価する上で重要だ。
一方でシステムを企画する部門は、特定の画面遷移機能は必要不可欠であり、これらの廃止は困難であるという見解をもっていた。これらの機能はロジックの複雑さの原因となっており、サービス追加等のエンハンスにおいて多大な時間とコストを要している。そこで中西氏率いるチームはこの機能の必要性を見極めるため、Pendoを活用して機能の利用状況を分析した。その結果、利用状況は多くないことが判明した。
これらの客観的なデータを基にチームは次回のシステム改修における画面遷移の最適化の可能性について、企画部門と具体的な議論を進められるようになった。将来的に開発時間とコストの効率化が期待されている。
また、Pendoは新機能の効果検証にも貢献している。条件が満たされていない契約が誤って手続きされることを防ぐため、中西氏のチームはシステム内でブロックできる新機能を追加した。この機能は不正契約の可能性がある場合に警告画面を表示し、店舗スタッフに注意を促す。この新機能の追加によって、誤って不正契約に進むケースが16%削減できたことがPendoアナリティクスのデータによって明らかになった。従来、新機能の有効性を証明するためにはローデータの収集が必要だったが、Pendoを導入したことで施策の効果を簡単に実証できるようになったことも大きなメリットだ。
◼️アプリ内ガイドでサポートとスタッフのコミュニケーションを効率化
店舗での顧客体験を円滑にするために、店舗スタッフは必要な情報にすぐアクセスできる必要がある。Pendoを導入する前は、確認が必要な情報はKDDIからのお知らせやマニュアルを参照し、解決しない場合はサポートセンターに問い合わせをしていた。その結果待ち時間が長くなり、顧客の不満にも繋がることがあった。
Pendoのアプリ内ガイドは、この問題を迅速に解決できると期待している。問い合わせが発生しやすいポイントにはガイドを表示することでサポートセンターへの問い合わせが減少し、結果として接客のスピードを向上させる狙いがある。現在、サポートセンターへの問い合わせ減少を目的に、店舗支援チームと一緒にガイド施策を検討し、検証段階に入っている。
またKDDI は、新製品や新サービスのリリース、システムアップデートに伴い、店舗スタッフに対し定期的に通知を行なっている。一部のアップデートについては、店舗スタッフが店舗受付システム内のマニュアルを確認する必要があったが、接客業務の繁忙等により、情報が見落とされるリスクがあった。
「私たちが目指しているのは、マニュアルに頼らないシンプルなシステムです。そうすれば、スタッフに情報を素早く伝え、必要なアクションを取ってもらうことができます。Pendoはまさにそれを実現してくれると考えています」 と中西氏は評価する。
KDDIでは実際にPendoのアプリ内ガイドを使用して、アプリをアップグレードするためのシステムアップデートについてスタッフに通知を実施したところ、導入初日に実に57%がバージョンアップを実施した。従来の案内では40%だったため、これは大幅な改善と言える。システム外でドキュメントを探す必要がなく、ガイドを通じて迅速に情報にアクセスできたことがこの成果につながったと考えられ、中西氏はこの実施率の向上に大きな手応えを感じている。
◼️価値あるカスタマーサービスの提供を目指す
サービスの拡大を続けるKDDIにとって、運用効率の改善も大きな課題だ。Pendoは利用状況データの確認、分析、そして行動につなげるためのツールを提供することで、店舗スタッフのより効果的なカスタマーサービスを支援することができると考えている。中西氏はサービスの効率を向上させるためにはDXが不可欠であると考えており、その戦略の中でPendoのプラットフォームは重要な役割を担うという。
「Pendoを活用することで顧客とのやり取りやデバイスの利用状況を可視化し、スタッフ、店舗支援チーム、IT部門の業務を最適化していきたいと考えています。私たちの最終的な目標は、店舗スタッフが価値あるカスタマーサービスを提供できるようにすることです。今後もPendoを活用し、このビジョンの実現に向かって邁進したいと思います」(中西氏)