三井住友海上火災保険株式会社

保険代理店向け営業支援システムの正確な実態把握にPendoを活用
~多彩な分析機能で「MS1 Brain」のさらなる進化を支える~
■課題
・代理店向け営業支援システム「MS1 Brain」の利用実態を把握するためシステムログを収集していたが、データ分析に時間がかかり年1~2回の分析頻度にとどまっていた
・インタビューやアンケートの手法では即時性のある実態把握が難しく、UI /UXの迅速な改善判断が難しかった
・「MS1 B rain」のヘルプデスクに寄せられる操作性や使いづらさをシステム改修せずに改善したかった
■成果
・「MS1 Brain」の利用実態をPendoで詳細に把握
システムの閲覧回数や滞在時間などの分析をPendoで自動化。データサイエンティストの分析に頼ることなく、細かな利用実態がタイムリーに把握できるようになった
・ヒトの感覚と利用実態の分析が可能に
インタビューベースの利用実態の把握に比べ、Pendoではシステムの利用動線が細かに把握できるので、利用実態を踏まえたインタビューの高度化に寄与。UI /UX改善活動のサイクル化や内製化に弾みが付いた
・ヘルプデスクへの照会を順次ガイド機能に置き換え
月500件寄せられるヘルプデスクへの照会の中から、Pendoのガイド機能でフォローできる内容は手順指示や操作ヒントなどに置き換え。システム改修を行うことなく利用率を向上させた
[1] 三井住友海上火災保険株式会社様の事業内容
~約3万を超える保険代理店の営業活動をAIで支援~
三井住友海上火災保険株式会社
ビジネスデザイン部 MS1 Brainチーム長 飯間 昭夫氏
三井住友海上火災保険株式会社
ビジネスデザイン部 MS1 Brainチーム 課長代理 前原 理光氏
飯間様:三井住友海上火災保険はMS&ADインシュアランス グループ ホールディングスの中核を担う損害保険会社です。当社は、損害保険会社としての補償を真ん中としてとらえた時に、軸となる保険はもちろん、事故発生「前」の予防、そして事故発生「後」の早期リカバリーなどを支援する補償前後のサービスを拡充させ、リスクに対するソリューションを総合的に提供していくことが損保会社の提供価値の変革に欠かせないと考えています。そこで2023年からさまざまなアライアンスパートナーの方々と、予防やリカバリーを支援する総合的リスクソリューションの提供を開始し、お客様や社会の課題解決に貢献していく第一歩を踏み出しました。我々が所属するビジネスデザイン部は、そういった新しいソリューションの企画開発・運用推進を担う部門です。
2020年2月から提供を開始した「MS1 Brain」は、日本全国で約3万を超える保険代理店の営業活動にAIを活用して支援するシステムです。過去7年間の契約情報や顧客情報などのビッグデータをAIで分析し、どのお客様にどのような商品を提案するべきかを、代理店の営業担当者に提示します。合わせて、最適な行動・話法・ツールを示唆し、提案状況も可視化するので、代理店内の情報共有も容易になります。
その結果、代理店とお客様の距離を近づけ、関係強化につながります。
[2] 導入前の背景や課題
~MS1 Brainのさらなる進化に向け、ユーザの活用実態を正確に把握したい~
前原様:MS1 Brainはお客様の体験価値を向上させ、代理店の経営や当社の営業社員の役割を変革するための重要なツールです。そのため、機能やUI/UXは常にユーザの意見を汲み上げながらブラッシュアップしていく必要があります。しかし、実際には現状のシステムの活用割合や習熟度、今ある機能の中でどれが使われているか、あまり使われていないかという部分が、意思決定に足りるレベルで把握できていませんでした。
MS1 Brainは当初から全ユーザのログを蓄積しています。代理店数は約3万といっても、それぞれの代理店には数十、数百の担当者がいらっしゃり、すべてのユーザ数は数十万人を超えます。当然その解析にはデータサイエンティストがかなりの工数をかける必要があり、年に1~2回ほどしか分析することができませんでした。また、分析にも時間がかかるため、タイムリーな利用実態の把握が課題となっていました。
飯間様:代理店の規模感や店主の皆様の個性によってもツールの活用法はかなり変わってきます。そのためどうしてもサンプリングに限りがあるインタビューやFormsなどのアンケートだけでは確かな活用内容が定量的に見えてこない。使いやすい機能をさらに使いやすく、使われていない機能をどう使えるように改善していくかを検討するには、やはりシステムの利用頻度や時間、多く使われている機能などを正確に把握できるDAP(デジタルアダプションプラットフォーム※)ツールが必要だと判断しました。
※DAP(デジタルアダプションプラットフォーム)とは、ソフトウェアやアプリケーション、Webサイトなどをユーザが快適に利用できるようサポートするソリューションを指す
[3] Pendoを選択したポイント
~分析力の広さ・深さの優位性からPendoを採用~
飯間様:2020年にMS1 Brainをリリースした後、私はアメリカのインシュアテックのスタートアップに2年近く勤務する機会を得ました。保険ビジネスのさまざまなフェーズで最新のテクノロジーを積極的に取り入れ、効率や収益率を高めたり、UI /UXを改善することができるのを目の当たりにしたわけです。どの会社も自社のシステムをさらに使いやすくしようと、DAPツールを複数使いこなしていました。
MS1 BrainにはNECさんが日本での販売権を持つdotDataが実装されていることから、NEC現地法人の方々とは日ごろから情報交換するなどの交流を重ねていました。そこで私が2023年3月に日本へ戻る際、MS1 Brainに適用できそうなDAPツールを複数ご紹介いただく機会を得ました。その中にPendoも入っていましたが、妥協はしたくなかったので日本製2社、海外製3社の中からビジネスユースケースの網羅性を中心に徹底的に機能を比較し総合評価で選定していきました。
前原様:ビジネスユースケースは12個ほどつくりました。例えば、特定の代理店がAIによるニーズ予測をどのページまで見ていて、そこに何秒滞在し、次のページに移行しているかが、見えるかどうかといった感じです。我々がユーザインタビューをしたり利用実態を把握したりする際に、どのような部分まで知りたいのか、その広さと深さがちゃんと追えるかどうかといったユースケースをつくり、ミクロ的なユーザ行動が可視化できるかどうか、また、マクロ的な全体の利用状況を可視化・分析できるかどうかなどについて、2カ月ほどかけて検証していきました。
飯間様:システムにおけるUI/UXを変更しようとしたときに、データサイエンティストやシステム部門に頼んで現在のシステムの利用状況を分析してもらうのではなくて、ビジネスサイドがしっかり分析できるかといったことも重視しました。
前原様:その点、Pendoは分析の深さが圧倒的に優れていました。あるユーザがそのページに何分何秒滞在しているかがわかりますし、分析対象の設定も自由自在です。例えば、このエリアの中規模の代理店だけ集めて、直近1週間における、特定の機能の利用率を比較するといった詳細なコントロールが可能なのです。そういったユースケース検証や、そもそもMS1 Brainのログを解析できるのかどうかといった技術検証を実際のデータを用いて半年ほど実施した上で、2024年4月にPendoの正式採用を決定しました。
[4] 導入後の成果
~明確なデータで「意外な洞察」や「新しい視点」を見つけることが可能に~
前原様:Pendoは私と飯間、あと社内データと連携させた上で分析をしたり、ガイドの作成・検証を行っているメンバー2人ほどが使っています。実は正式導入して2~3カ月くらいでMS1 Brain各機能の活用実態を把握するための分析は終了しました。現在は、新機能やガイドのリリースに伴うユーザ動向を定期的にモニタリングしています。また、インタビューベースの利用実態の把握に比べ、Pendoではシステムの利用動線が細かに把握できるので、利用実態を踏まえたインタビューの高度化にも寄与しています。これによりUI/UX改善活動のサイクル化や内製化に大きく弾みが付きました。
一方で、個々の機能だけではなくて、MS1 Brain全体の活用についてもPendoによって新しい視座を開くことができました。MS1 BrainはSFA(営業支援)機能やCRM(顧客管理)機能に、お客様ニーズを予測するビッグデータ分析を組み合わせているのが特長ですが、どちらかといえばニーズ予測のSFA機能の方がより多く使われていると認識していたのです。しかし蓋を開けて見ると、お客様とコミュニケーションを取る前に細かい情報を確認したりする際の動線で3倍くらいCRM機能の方が使われています。そのためMS1 Brainの新バージョンではCRM側の強化こそが必要だと改めて認識しました。この分析結果にはメンバー全員が驚いていました。
▲ きめ細かくユーザの利用履歴が確認できるため、より効果的にインタビューを実施することが可能になった
▲ CRM機能の利用割合を異なる代理店層で比較したもの。細かな粒度で利用実態を把握することができる
飯間様:現在はダッシュボードを見ながら、募集人単位、代理店単位で活用実態を確認する使い方や、ガイド機能によるシステム利用のサポートがメインです。当社にはヘルプデスクという組織があり、MS1 Brainについて代理店の皆さんが「ここの機能の使い方がわからない」「エラーの解消方法がわからない」などの照会を多く受け付けています。月に大体500件ぐらいヘルプデスクに照会が入っていたのですが、その中で照会が多いものを確認すると、その多くが画面上にガイドを出せばサポートできそうだなということがわかり、徐々にガイド機能を充実させています。ユーザビリティの改善をガイドする方法だけではなく、そもそも機能の存在を知らないから使っていないのではないかというパターンもあり、「こういう機能があることを知っていますか?」というナビゲーションを加えた結果、今まで利用したことがないユーザの内、約3割がクリックして、機能を試していただくというような効果も出ています。こうしたシステム上にガイドを表示することが、開発を行わずにビジネスサイドで完結できる点を非常に高く評価しています。
▲「 メモ・添付機能」に関するガイドをつけた後の利用者数の推移。ガイドの有効性を検証し、次の打ち手を考えることができる
[5] 今後の展望
~Pendo AIの活用でさらなる自動化を推進へ~
前原様:これから次期MS1 Brainとして新機能の提供を行っていくわけですが、新機能そのものをガイド機能でフォローしていくのは当然として、今後はアジャイルに現行機能の棚卸しをしたり、新機能の活用状況をタイムリーにチェックしたりすることも視野に入れながらシステムを運用していきたいと考えています。そのため、そういった部分の分析により力を入れて打ち手を考えていきたいですね。
飯間様:もう1つ考えているのがPendo AIの活用です。今はまだ前原が分析機能から導出されたボトルネックなどに対して一生懸命ガイド機能を使ってフォローしてくれているのですが、もし生成AIでそれらの部分が自動化できるのであれば、我々はもっと高度な打ち手の検討に力を注ぐことができるようになる。そこは本当に期待しています。
[6] 導入を検討している方へのメッセージ
~アプリケーションやシステム開発の羅針盤として活用してほしい~
飯間様:MS1 BrainのようなWebサービス、アプリケーションにおいてはUI/UXの改善がつきものです。しかし限られたアンケートやインタビューなどを基に自分たちだけでその改善を進めようとすると、手探り状態で進めていくしかできません。ところがPendoを導入してシステムの利用実態がはっきり見えてくると、この機能は必要でこれは不要、この
機能が使われないのは使い勝手が悪いせいだったのだと、きちんとした手応えを持って前へ進めるようになっていきます。その意味でPendoは向かうべき方向への羅針盤になりえるツールだと言えるかもしれません。
前原様:Pendoなどの分析ツールってPDCAのまさにCだと思っています。今はいろいろな会社にシステムを所管している部署の方々がいらっしゃると思いますが、そのチェックの部分って結構、あいまいなチェックで終わってしまっているケースがあると思いますし、そこにかける時間もムダに多くなっていることがあるのではないでしょうか。ならば最初にシステムをつくるプランの段階で、Pendoのような分析ツールを入れていくという判断は業務の効率化に向けた選択肢として非常に重要なのではないかと思います。そうしなければ後のアクションがどうしてもずれてしまう。そうしたことを避け、アプリケーションやシステムの改善を図る上で、こうしたツールは不可欠になっていくと思います。