新しいクラウド製品「弥生Next」の価値最大化

弥生株式会社 at a glance
弥生株式会社
課題
・定着率改善のために、機能の利用率を改善したい
・離脱ポイントを知り、離脱を防ぎたい
Pendoの使い方(Pendo'ing it)
・利用率、離脱ポイントなどについて定量的な把握と分析ができる点
・コア機能の利用率を上げられる機能がある点
・サードパーティツールとの連携ができる点
結果
・コア機能の利用率が向上
・ガイド機能で動線を示すことで特定の機能操作に至る比率がガイドを利用しない人の1.4倍に
・サードパーティツールとの連携でマーケティング活用や部をまたいでのビジネスの推進が加速
目次
挑戦を続ける会計ソフトウェア企業
弥生株式会社は会計、給与、販売管理などのバックオフィス業務を支援するソフトウェア企業だ。創業は1978年、40年以上の歴史を持ち、中小企業を中心に多数の顧客を持つ。同社のミッションは、「中小企業を元気にすることで、日本の好循環をつくる。」近年はクラウド市場の拡大に合わせて、SaaS製品の開発にも注力している。
「インボイス制度や電帳法改正といった大型の法令改正が追い風となり、会計ソフト市場全体は拡大しています。特にクラウド会計市場は高い成長を遂げています」と語るのは、次世代本部 次世代戦略部 部長の広沢義和氏だ。
こうした市場の変化を受け、弥生では2023年7月に次世代本部を立ち上げ、「弥生Next」シリーズの企画・開発を推進した。スピード感を持って新製品の価値を最大化するために、データ駆動型の製品改善をより強化したいと考えていた。
ページアクセスではわからない離脱ポイントを知りたい
弥生 Nextシリーズは弥生給与Nextと弥生会計Nextがあり、弥生会計Nextでは請求、証憑管理、経費精算の機能も利用できる。継続的に利用を促進するにあたり、特にユーザーの利用定着に課題を感じていた。
「毎月の業務で使っていただく製品ですが、新規ユーザーの利用定着には課題がありました」と語るのは、次世代本部 次世代戦略部 データ分析担当としてプロダクトデータ分析を行う住澤大輔氏だ。
弥生給与 Nextでは、ユーザーは初期設定を行った後、毎月の業務で給与明細を作成するという流れだ。今まで、ユーザーの製品操作をページアクセス単位では把握できていたが、特定のボタン要素のクリックなど、操作ポイント単位までは細分化できていなかった。住澤氏と同じくデータ分析担当を務める藤村和輝氏は、「お客様がどこで離脱しているのか、初期設定の部分なのか、コア機能の部分なのかを定量的に把握したいと考えていました」と当時の課題を振り返る。
そこで2023年8月、ユーザーの利用状況を詳細に分析し、改善サイクルを迅速に回すためのソリューションとしてPendoの導入を決定した。
スピード重視の組織文化がスムーズな導入を実現
Pendo導入の決め手は何だったのか。広沢氏は「高度な分析、外部ツールとの連携など必要な機能を満たしていたこと」と話す。グローバルではPendoがデファクトであるという評判も、経営陣の背中を押したという。
実証実験(PoC)では弥生給与Nextを対象に検証を行い、「製品の利用実績をページアクセス数だけでなく、ボタン要素のクリック単位で取得できる」「想定している主要動線をたどっている人の割合や離脱ポイントを見ることができる」「外部ツールと連携できる」などを確認、クイックに分析を回していける点を評価した。
社内承認プロセスもスムーズだった。「費用対効果の確認はありましたが、PoCを通じて期待する成果が得られたことは説得材料になりました。PoCの間に得た学びから、活用の仕方を整理して進めることができました」と広沢氏は振り返る。
特筆すべきは、組織立ち上げから導入決定、そして実際の運用開始までのスピードの速さだ。2023年7月に次世代本部が立ち上がり、8月にPendo導入を決定。9月から3ヶ月間のPoCを行い、11月には本格導入を開始した。これについて広沢氏は、「新しい組織のミッションとしてスピードを重視するという方針があったため、意思決定も迅速に行いました」と語る。
ノーコードでのガイド施策による離脱対策
弥生では、Pendoをインストールスクリプトの挿入という方法で実装している。実際の作業は開発チームに依頼する形だが、特に問題はなく、すぐに使える形となった。
現在、給与、会計、請求、証憑、経費と5つの製品それぞれに対して、Pendoを活用している。
測定したかったコア機能の利用状況については、ユーザーの定着度合いを測るKPIを設定し、Pendoを使ってモニタリングをしている。
離脱については、Pendoのファネル分析機能を使い、操作に慣れていない初心者かどうかなどユーザーのセグメントを切って比較しながら離脱のポイントを探る。そして見えてきた各離脱ポイントで、Pendoのガイド機能を使ってユーザーに次のステップや操作を知らせることで離脱を防ぐという施策をとっている。「ノーコードでガイドを実装できるので、エンジニアの対応を必ずしも必要とせずとも施策を打つことができます」と住澤氏。
製品改善の効率化、全社的なデータ活用の広がり
定着率改善を主な目的としてPendoを導入した弥生だが、その効果は出ているようだ。
例えば、ガイド施策の結果について住澤氏は次のように語る。「初回ログインから給与明細作成まで一連の流れをサポートするガイドを設置した結果、ガイドを利用したユーザーの定着率は、そうでないユーザーの1.4倍に達しました」
ガイド施策は、住澤氏らプロダクトデータ分析チームだけでなく、 UI/UX担当者が担当することもある。「KPIモニタリングでは、戦略部門と開発部門が同じ数字を見ながら施策のPDCAを回す体制になっています」と住澤氏。「最近では、開発側からPendoを使って新機能の利用状況を見たいという要望をもらうこともあります」とその反応を喜んでいる。戦略部門と開発部門の間でコラボレーションが促進されているようだ。
開発効率でも大きな成果があった。
弥生会計Nextには複数の関連製品が組み込まれており、ユーザーはその製品間を横断して利用できる。リリース時はその動線が一部整備されておらず、ユーザーにはわかりにくいという問題があった。そこで、製品間の移動をスムーズにする動線を、ガイド機能で実装した。「開発チームによると、開発対応では工数が膨大になり現実的ではなかったため、ガイド機能での対応が採用されました。その結果、約2週間で機能実装が完了し、開発対応と比べて約2ヶ月早くリリースすることができています。」と住澤氏。
外部ツールとの連携も順調だ。分析はPendoでもできるが、Pendoの連携機能を使ってPendoから得たデータをBIツール「Domo」と連携させ、全社的なデータ活用を進めている。「Domoの数字は次世代本部だけでなく、他本部のメンバーも見ており、部門を跨ぎ共通のKPIをモニタリングしながらビジネスを推進できるようになっています」と住澤氏は説明する。また、マーケティングツールである「Adobe Marketo」とも連携し、ユーザーの利用状況に応じた個別メッセージを送るなどしているという。
現在、社内でのPendoアカウントは約170にまで増え、直近90日間のアクティブユーザーも100を超えるなど、利用は広がりを見せている。
「『Pendoではどうなっているか』『Domoに連携させよう』といった言葉がよく聞かれるようになり、業務がクイックに回るようになってきています。数字があるので、感覚的な話ではなく実績値に基づいた議論ができるようになりました」と藤村氏。また、「プロダクトオーナーからは『数字が見えるので、エンジニアのモチベーションになる』という声も聞かれます」とその効果を語った。
社内でも高く評価されている。2024年10月の社員総会で、住澤氏と藤村氏チームが手掛けるPendo活用による定着率改善の取り組みが「弥生賞」を受賞した。約50のプロジェクトがノミネートされる中で選ばれた栄誉だ。
「定着率は継続利用につながる重要な指標で、ビジネスの収支に大きく影響します。Pendoを活用することで定着率を改善できたことは、経営の目線から見ても意義があると認められました」と社内からの評価を喜んでいる広沢氏は、自身でも業務の変化を実感している。「これまではデータがなかったり集計に時間がかかったりしていましたが、Pendoを利用するようになってからは比較的クイックに状況を把握できるようになりました。集計分析にかける時間が減り、課題解決のアイデアにより多くの時間を使えるようになりました」。
AI活用に期待、自社のAI展開でもPendoを活用したい
成果を実感したところで、今後は他のプロダクトや機能にもPendoの活用を広げていきたい、と3人は今後の展望を語った。
その1つがAIだ。「弥生NextではAIを活用した機能の実装を検討しており、その利用状況をPendoで分析する予定です。AIを活用した機能がユーザーに刺さっていることがわかれば、社内でAI導入を加速する後押しになります」と藤村氏は語る。そこでは、Pendoのリッスン機能の活用も検討しているという。
Pendoへの期待として、住澤氏はローカライゼーションの強化、AI対応の強化を挙げた。「対話型インターフェースの導入やガイド作成の簡素化など、技術知識がなくても高度な機能を使えるようになると助かります」
広沢氏は「Pendoの魅力は分析だけで終わらず、施策実施まで一気通貫で迅速に回せる、これが一つのプロダクトに備わっている点。これからもPendoに期待しています」とまとめた。