プロダクト主導になるということは、ビジネスでの戦い方を再考することを意味します。組織全体がプロダクトの可能性に注目し、プロダクトを中心として認知、販売、成長を促進する必要があります。また、プロダクトを会社の「売り物」として捉えるのではなく、「すべての顧客やユーザーとのエンゲージメント(関与)を行うプラットフォーム」へと考え方を変えることも必要です。

特にマーケティングチームにとっては、プロダクト主導になることでこれまで定義されてきた「マーケティング」より範囲が広がります。プロダクト主導のアプローチでは、これまでメールナーチャリングやペイドメディアの啓蒙活動、カスタマーサクセス(CS)主導の1対1のプログラムに限られていた顧客成長の機会をプロダクト内に取り込み、顧客一人ひとりの状況に応じて調整することができるため、効果的で心に響くものにすることができます。


マーケティングチームにとって、プロダクト主導の成長(PLG)とは何か?

プロダクト主導の成長(PLG)は、企業のソフトウェアを購買ジャーニーの中心に置き、プロダクト自体に「販売」の多くを任せるビジネス戦略です。

優れたプロダクト主導のマーケティングチームは、プロダクト主導の仕組みに代えたからといって、既存のマーケティングプログラムを完全に放棄したりはしません。むしろプロダクトを、対象のオーディエンスにリーチし、拡大させるための追加のチャネルと見なしています。キャンペーンにプロダクト主導の戦略を取り入れることで、マーケティング担当者は顧客アカウントにパーソナライズされた、ターゲットを絞ったメッセージを提供し、心に響くストーリーテリング戦略によってプロダクトの価値を伝え、ユーザーが最も受け入れやすいとき(プロダクトを使用しているとき)にリーチすることができます。

マーケティング担当者がこれまで外部のプラットフォームで行っていた作業の一部をプロダクトに移行することで、運用効率が向上し、有料コンバージョンへの道筋が明確かつ合理的になり、より強固で多面的なキャンペーンの構築にマーケティング組織全体が注力できるようになります。


マーケティングチームはどのようにプロダクト主導型戦略を活用して成長を促進するのか

特にエンタープライズ企業では、カスタマージャーニーのさまざまな段階を、マーケティング組織内の複数チームが分担することがよくあります。たとえば、デマンドマーケティングを担当するチームは、販売前の段階で見込み客とのコミュニケーションを担当し、カスタマーマーケティングは既存顧客の新しいプロダクトや機能の定着率向上に焦点を当てます。 

ここでは、マーケティング組織内の各グループが、プロダクト主導のアプローチを活用してオーディエンスとの関わりを深め、成長を促進する方法の事例を紹介します。

プロダクトマーケティング

プロダクトマーケティングチームは、プロダクトの需要、興味、利用を生み出すことに重点を置いています。プロダクトのさまざまな特徴や機能の価値を実証し、見込み客がプロダクトを購入する(そして顧客がプロダクトを使用する)ように促すことに重点を置いています。プロダクトのマーケティング担当者が作成するキャンペーンやプログラムは、多くの場合、次のようなコアとなる目標を軸に考えられています。

  • プロダクトの認知度向上
  • プロダクトが解決すべき課題とその事例の紹介
  • さまざまなプロダクトや機能の価値の説明
  • プロダクトや機能がどのように成果をもたらすのかに関する明確なストーリーの提示
  • 競合他社との差別化

プロダクトマーケティングチームは、プロダクトチームや営業チームと密接に連携して、明確なプロダクトストーリーを伝え、見込み客にプロダクトの機能を理解してもらい、既存顧客に提供されているすべての機能が効果的に活用されるよう支援します。また、プロダクトチームが重要な更新をユーザーに伝えられるよう支援し、組織の長期的な成長に貢献する新しい機能やプロダクトを市場に投入する上で重要な役割を果たします。

プロダクト主導のアプローチは、プロダクトの専門家であるプロダクトマーケティングチームが成長キャンペーンを行う場合に最適です。たとえば、プロダクトアナリティクスを使って、顧客がどのようにプロダクトに関わっているかを確認し、新機能やプレミアム機能の恩恵を受けそうな行動をとる顧客を特定し、アプリ内ガイドでターゲットをその顧客に絞り、今後のウェビナーに招待したり、セルフガイドのプロダクトツアーに参加するように促したりすることができます。また、営業チームと協力して、無料またはフリーミアムユーザーのコホートを特定し、有料版で利用できる機能の利点を説明するメッセージを作成し、ユーザーがプロダクトを使用しているときにアプリ内ガイドを表示し、この機能のデモを提供できる旨を伝えることが可能です。

カスタマーマーケティング

カスタマーマーケティングチームは、既存顧客との関係を深めることに重点を置いています。このチームのキャンペーンは、通常、リテンションを高め、顧客ロイヤルティや支持を強化し、顧客が会社のプロダクトやユーザーコミュニティに参加するように促すことを目的としています。また、カスタマーマーケティング担当者は、カスタマーサクセス(CS)チームと連携して、プロダクトや機能の定着化を促進し、ユーザーがより多くのプロダクトの機能を活用できるよう支援します。

プロダクトを使用中のユーザーは、プロダクトに関するメッセージにより注目し、受け入れる可能性が高くなるため、アプリ内ガイドは、顧客のマーケティング担当者が最も重要なときにユーザーにリーチすることができる強力なツールです。ここでは、カスタマーマーケティングがアプリ内ガイドを活用して成長を促進する事例を紹介します。

  • アプリ内ガイドまたはツールチップを使用して、高度かつ有料な機能についてプロダクト内で紹介することで、現在のサブスクリプションには制限があることを顧客に示します。
  • コールトゥアクション(CTA)を使用して、プロダクトまたは機能の定着率が低い顧客をターゲティングし、今後のトレーニングウェビナーへの参加を促します。これにより、顧客は支援されていると感じることができ、プロダクトの使用率を改善してROIを達成するために必要なサポートを受けていると実感できます。
  • アプリ内アンケートまたは投票調査(あるいは事例作成の依頼)を、パフォーマンスの高い顧客や定着率の高い顧客に送信し、ブランドチャンピオンとしてプロモーションを助けてもらいます。自社と同じような企業による肯定的なレビューを見た方が、単なるマーケティングメッセージよりも受け入れやすいと顧客は感じます。

イベントマーケティング

イベントマーケティングチームは、認知度を高め、見込み客や顧客にリアルタイムで会社と関わる(そしてプロダクトを見てもらう)機会を増やすために、ブランドイベントの開催に注力します。イベントは、企業が見込み客にプロダクトの価値を説明して実証し、ユーザーをより広いコミュニティに関与させ、顧客を新しいプロダクトや機能に惹きつける(そして最終的には購入・利用してもらう)絶好の機会です。

プロダクト主導型戦略は、イベントマーケティング担当者が(特にアプリ内ガイドで)イベントの認知度を高め、参加者を増やすのに不可欠です。これは、見込み客である参加者に単にメールを送り、招待状がスパムフォルダに入ってしまうリスクを軽減するための強力な方法です。アプリ内ガイドはプロダクト内で提供されるため、顧客が招待状を目にし、参加を検討する可能性が高くなります。イベントのメッセージが特定のユースケース、プロダクトを使用して解決する問題、または顧客が抱えている使い方に関する課題に関連する場合には特に効果的です。

アプリ内ガイドは、マーケティング担当者が特定のペルソナや理想的なオーディエンスに応じて招待を作成できるため、イベントマーケティングチームにとっても非常に効果的です。たとえば、イベントマーケティング担当者は、まずはユーザーカンファレンスについて伝えたり、早期の登録を奨励したりするガイドをリリースします。その後アジェンダがすべて公開されたら、プロダクトマネージャー、IT管理者、カスタマーサクセスリーダーなど、さまざまなペルソナグループにターゲットを絞ったガイドを展開し、それぞれの役割に沿ったセッションに登録するように促すこともできます。イベントが近づいたら、各セグメントに対して簡単な投票調査を送信し、登録したセッションで取り上げてほしい質問やトピックがあるかを登録者に尋ねることができます。


PQL(プロダクトクォリファイドリード)を使った成長の促進

パフォーマンスマーケティング担当者の多くは、「マーケティングクォリファイドリード」またはMQLという用語に精通しています。これは、マーケティングチームが、販売サイクルに適している、または準備ができていると見なしたリードを指す言葉です。つまり、営業に引き渡すのに十分なマーケティングコンテンツを消費したリードです。

MQLは買い手の意思を示す優れた指標ですが、プロダクト主導のマーケティングチームはさらに一歩進んで、ブランドレベルのやり取りだけでなく、プロダクト内の活動にも基づいてリードを認定しています。プロダクトクォリファイドリード(PQL)は、まだ顧客になっていないものの、トライアル、無料またはフリーミアムプロダクト、セルフガイドツアーなどの無料の手段を通じてプロダクトから価値を得ているユーザーまたは企業です。PQLは、ユーザーの行動とプロダクトアナリティクスを活用し、リードが購入する準備ができているかや、契約内容を拡張する準備ができているかを判断します。

PQLの優れた点は、ユーザーが営業担当者と話す前に、自分でプロダクトを体験できることです。つまり、PQLは、まだプロダクトを使用していないMQLと比べて寛容で、売り込みに対して受容的であるということです。PQLを適格かどうかの基準とすることで 他の分野の効率化も図ることができます。PQLを使うことで、営業やセールスオペレーションチームと共有するリードは購入の意思を示している、ということがより確実になります。また、PQLとして開始した顧客は、プロダクトの機能や、機能が目標達成にどのように役立つかを基本的に理解しているため、新規顧客のオンボーディングに携わるチームの作業が楽になります。

マーケティングチームは、メッセージをプロダクトの価値に集中させ、CTAを使用して見込み客をトライアル、フリーミアムサービス、セルフガイドツアー、デモに誘導することで、PQLに影響を与えることができます。そこから、マーケティング担当者は無料ユーザーを有料顧客に引き上げるプログラムを通じて、これらの商談を加速、成長させることができます。