プロダクト主導型になるには、組織内の各部門がライフサイクル全体を通じて顧客やユーザーとどのように(そしてどこで)関わるのかを再考する必要があります。プロダクト主導の概念をすでに理解している人にとっては、プロダクトを使用して価値を伝えたり実証したりするための適切なジャーニーのステージとして、定着化成長が最初に思い浮かぶかもしれません。 

しかし、ジャーニーの途中で顧客やユーザーが行き詰まり、すぐに助けを必要とする場合はどうしたらよいでしょうか?

優れたプロダクト主導型企業(PLO)は、プロダクトを活用して、タイムリーで状況に応じたサポートを提供します。

プロダクト主導型企業は、すべてが順調なときだけ顧客に連絡するためにプロダクトを使用するわけではありません。顧客がさらなる支援やガイダンスを必要とする場合を考慮し、プロダクトを活用して状況に応じたタイムリーなサポートを提供するのです。


プロダクト主導のサポートとは何か?

プロダクト主導のサポートは、ユーザーを支援する手段としてプロダクト自体を活用し、プロダクトをより効果的に使用できるようにする戦略です。企業がサポートへの問い合わせに1対1のやりとりをする必要がある従来のサポートモデルとは異なり、プロダクト主導型組織(PLO)は、アプリ内メッセージまたはプロダクト自体に埋め込まれたリソースを使用して、顧客から来るであろう一般的な問い合わせに対し能動的に情報を提供します。

ここで重要なのは、プロダクト主導のサポートを行うことは、カスタマーサービスやサポート機能に取って代わるものにはならないということです。カスタマーサポートチームは、技術的な課題のトラブルシューティングや診断を支援する上で重要な役割を果たし、問題を適切なチームにエスカレーションし、広範な問題を特定する上で不可欠です。 

PLOは、ガイド、リソース、フィードバックポータル、お問い合わせフォームなどのアプリ内メカニズムを使用して、人間主導のサポートを補完しています。この戦略は、顧客が支援を必要とする場合にその企業とどのように関わりたいかという観点で選択肢を提供します。この種のサポートをプロダクト内に取り込むことで、人間が介入せずに対処できるため、リクエストや質問への対応に費やされていた組織のリソースが解放されます。


プロダクト内で顧客をサポートする利点

プロダクト主導のサポートには、顧客とユーザーにとって次のような多くの利点があります。

  • 必要に応じてセルフサービスでリソースやガイダンスを利用できる
  • ユーザーは質問に対する回答を見つけるためにプロダクトを離れる必要がない
  • カスタマーサクセスマネージャー(CSM)やサポートチームからの支援を待たずに、即座に回答を得ることができる
  • プロダクト内で状況に応じて提供されるため、リソースが効果的である
  • ユーザーが最終的に追加の支援を必要とすることになったとしても、プロダクト主導のサポートは、サポートを待つ間の優れた応急処置になります。

顧客が技術的な問題に遭遇したときに、まず連絡するのが大抵カスタマーサクセスマネージャー(CSM)であることは事実です。技術についての支援はCSMの業務内容に含まれていないことがほとんどですが、顧客が問題を解決できるよう適切なリソースを見つけたり、適切なチームと連携するために、かなりの時間を費やしています。プロダクト主導のサポートのアプローチを使うことで、CSチームはこのような繰り返しのトリアージ作業を省くことができます。ドキュメント、FAQ、プロダクトアップデート、お問い合わせフォームなどのリソースをプロダクト内に取り込むことで、その都度CSMに相談したり、発生した小さな問題に対して問い合わせをするのではなく、必要なものをセルフサービスで得られるように顧客を「トレーニング」することができるので、顧客のフラストレーションの軽減につながります。

また、CSの効果は多くの場合、拡大とリテンションによって測定されますが、カスタマージャーニー全体を通じて顧客が受ける継続的なサポートは、継続するか解約するかという意思決定に影響します。そのため、CSMがライフサイクル全体を通じて顧客のサポートに投資することが重要なのです。さらに、CSMが通常対応するサポートの一部だけでもプロダクト内で対応することで、CSMはより価値の高い仕事に集中でき、収益面でビジネスに最も影響がある顧客のプロダクトの利用を促すことに集中できます。

ここでは、プロダクト主導のサポートがCSチームにもたらすその他の利点をいくつか紹介します。

サポートチケット(問い合わせ)の量を削減する

ユーザーが頻繁に必要とする情報をプロダクト内で利用できるようにしたり、ユーザーが日常的に行うプロセスをナビゲートするのに役立つアプリ内ガイドを提供したりすることで、顧客が送信するサポートチケットの数を減らすことができます。プロダクト主導のサポートでは、ユーザーがプロダクトを使用しているときに情報をプロダクト内で表示し、ユーザーが自分の状況で必要なものをできるだけ簡単に見つけられるようにします。それでも顧客がCSMやサポート担当者と話す必要がある場合、PLOは、アプリ内チャット、スケジュール設定、サポートチケットの送信、フィードバックの収集など、プロダクト内のツールを使用して顧客が連絡を取ることを支援します。このような機能をプロダクトに組み込むことで、ユーザーが送信する情報が可能な限りコンテキストに沿ったわかりやすいものになり、迅速な解決が可能になります。

これまで工数が多くかかっていたプロセスを広範囲に適用できる

アプリ内リソースを使用してカスタマーサポートを強化することも、CSチームが活動範囲を広げる上で有効な方法です。基本的な手順を共有するような単純作業を排除したり、サービス停止などの重要な更新情報について顧客に簡単に一括通知したり、CSMが顧客のサポート体験をカスタマイズできるようにしたり、適切なインテグレーションによりミーティングのスケジュール設定など、時間のかかるプロセスを自動化したりできます。これにより、CSMは単純で繰り返しの問い合わせに対応することなく、顧客との関係を育むことができ、優れた体験を提供することに専念できます。

CSMが積極的にお客様に働きかけることができる

顧客がサポートされていると感じられるようにする方法の1つは、プロダクトジャーニーを通して決して1人ではないことを伝えることです。プロダクト主導のサポートでは、アプリ内ガイドを活用して、顧客がプロダクトを効果的にナビゲートしたり、困っているときや質問があるときに適切な人や情報にたどり着く方法を見つけたりできるようにします。また、CSMはアプリ内ガイドを使用して、顧客が問題に遭遇する前に能動的に関与することもできます。たとえば、テクニカルサポートチームを紹介したり、利用状況を見たときにサポートの必要性や解約の可能性を示しているようであれば、面談を依頼して介入できます。


快適なアプリ内サポート体験を構築するためのヒント

プロダクト主導のサポート戦略を立てることは、実はそれほど難しくはありません。ほとんどの組織では、アプリ内体験を構築するために必要なリソースの大部分が、サポート関連資料、FAQ、コミュニティサイトなどの外部リソースに分散しています。それらをすべてまとめてこれまで以上に実用的な方法で提供すればよいのです。

CSMは、顧客の最も一般的なニーズや学習の好みについて、非常に多くの知識があります。顧客やユーザーからよく寄せられるサポート関連の質問について検討し、それを解決するためにこれまで使用してきたプロセスを思い出してください。1対1で顧客に説明したワークフローをプロダクトに取り込み、同じ問題に遭遇する可能性のある他のユーザーが利用できるようにすることは可能でしょうか?

ここでは、優れたプロダクト主導のサポートプログラムを構築するためのヒントをいくつか紹介します。

分析から始める

プロダクト内サポートプログラムを構築しても、顧客やユーザーが頻繁に直面する問題がわからなければ意味がありません。まず、ユーザーがどのようにプロダクトと関わっているかを明確に理解することから始める必要があります。そうすることで、潜在的な実践支援のギャップや、最終的にCSチームに寄せられる可能性がある一般的な質問を特定することができます。このような基本的な質問に答えるには、プロダクトアナリティクスツールを使用します。

  • 問い合わせをしてくるユーザーに共通する行動は何か?
  • ユーザーは、助けを求める前にどんなことをしているか?
  • 特に苦労している機能や、失敗しているワークフローはあるか?
  • ユーザーは意図したとおりにプロダクトを操作しているか、それとも本来の使い方ではない回避策を見つけているか?

顧客がプロダクトをどのように使用しているか、あるいはどこでつまづいているかを理解すれば、そのユーザーをセグメント化し、積極的にアプリ内ガイドでターゲットを絞って、顧客が直面している問題を解決できるよう支援することができます。 

アプリ内に情報をまとめる「リソースハブ」がある場合は、そこを分析しデータを取って、オンボーディングや実践支援などのプロセスを継続的に改善することもできます。たとえば、リソースハブ内の特定の情報に多くのユーザーがアクセスし、その情報を確認しないとワークフローを完了できていないことがわかった場合、そのワークフローに焦点を当てた専用のトレーニングやガイドを作成することを検討できます。そうすることで、他のユーザーが同じ困難に遭遇することがなくなったり、同じ問題についての情報を探しまわったりする必要がなくなります。

サポートのリソースを簡単に見つけられるようにする

プロダクトにサポート関連の情報やコンテンツを組み込んでも、ユーザーが見つけられなければ意味がありません。プロダクトチームと連携し、アプリ内サポートを簡単に見つけて使用できるように工夫しましょう。たとえば、プロダクトのナビゲーションや見やすいウィジェットに、サポート資料などの役に立つリソースを埋め込みます。また、アプリ内ガイドを活用して、ユーザーに見てほしい箇所にガイドを表示したり、過去にサポートチケットを送信したが、サポート資料にまだアクセスしていないユーザーを対象に、カスタムのアプリ内ガイドを表示することを検討してください。

快適なサポート体験を作る

プロダクト主導のサポートは、CSMおよびサポート担当者の作業をプロダクトに完全に任せるわけではありません。CSMやサポート担当は、プロダクト主導の戦略を適用することで、顧客やユーザーがより良い体験をする方法を考えることができます。プロダクトをどのように活用すれば、不快な瞬間を喜びの瞬間に変えられるかを考えてみてください。 

FAQや技術資料などのリソースの域を超えて、顧客が疑問があった場合にまずプロダクト内で解決してみようと思う、魅力的なサポート体験を作り出す方法を検討しましょう。たとえば、アプリ内ガイドやリソースハブの一部を定期的に更新し、常に最新情報を受け取っていることがわかるようにします。または、プロダクトに関する資料だけでなく、動画やGIFを使って、特定の問題のトラブルシューティング方法を紹介してみましょう。