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デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)とは?
デジタルアダプションプラットフォーム(デジタルアダプションソリューションまたはDAPとも呼ばれます)は、他のソフトウェアプロダクト、アプリ、ウェブサイトの上に階層化されたソフトウェアで、ユーザーがプロダクトを操作する際に重要なタスクを案内し、コンテキストに沿った情報を提供することで習熟を促進するものです。これらのツールは、新しいユーザーがアプリケーションにすばやく慣れ、習熟するのに役立つだけでなく、新しい機能の定着化を促進するための継続的な教育を提供します。
なぜ、デジタルアダプションプラットフォームが重要なのですか?
ユーザーの生産性と成長を促進するために、ソフトウェアをスムーズかつ効率的に使用することがますます重要になる中、デジタルアダプションプラットフォームを使用すれば、企業がチームで使用するアプリケーションを最大限に活用できるようになります。これは、新入社員がすぐに作業を進めることを可能にする効率的なアプリ内オンボーディングを提供したり、問題が発生してITサポートのボトルネックにつながる可能性がある領域を継続して追跡したりすることなどが含まれます。
ここでは、DAPがデジタルアダプションを次のレベルに引き上げる方法をいくつかご紹介します。
- DAPは、オンボーディングプロセスをスピードアップし、ワークフローを円滑にし、トラブルシューティングに費やす時間を短縮することで、ユーザーの生産性を大幅に向上させることができます。
- ソフトウェアが十分に定着しないことが原因で、企業は毎年多額の損失を出しています。DAPは、ユーザーがソフトウェアを効果的に利用できるよう、十分なトレーニングを積んで準備を整えられるようにすることで、こうしたコストの課題に対処します。
- 適切なDAPは、内部ガバナンス対策とベストプラクティスの遵守を保証し、効率をさらに高めるのに役立ちます。
- 最終的に、ユーザーの生産性とアプリの使用感の向上は、顧客体験の向上につながります。
しかし、上記以上に大切なのは、適切なデジタルアダプションプラットフォームが提供する堅牢なアナリティクスです。効果的なオンボーディングは重要ですが、継続的な学習と測定によって、より大きな価値がもたらされます。 DAPの効果を最大化するには、DAPが収集したデータを活用することが不可欠です。
- DAPは、企業のソフトウェア内のユーザーの行動に関する貴重なデータを収集して分析し、ユーザーの障害となり大量のITサポートチケット発生の原因となっている可能性のある領域に関するインサイトを提供します。
- さらに、DAPはユーザーの行動を分析し、指標(アプリ内ガイドの完了率や特定のタスクに費やした時間など)を追跡することで、組織が潜在的な改善領域を特定してデジタルアダプション戦略をさらに練り上げるのを支援します。
このデータ主導のアプローチにより、DAPへの投資は確実にプラスの利益をもたらします。
デジタルアダプションプラットフォームのメリット
デジタルアダプションプラットフォームの効率的なアプリ内オンボーディングによって、新入社員はすぐに業務に慣れることができますが、メリットはそれだけではありません。 デジタルアダプションプラットフォームは、全体的なユーザー体験を向上させ、ソフトウェアのユーザーだけでなくソフトウェアを開発およびサポートするチームにとっても長期的な価値をもたらします。 主なメリットについて詳しく見ていきましょう。
オンボーディングの迅速化
従来のオンボーディング方法はたいがい、長いマニュアル、動画のチュートリアル、または教室でのセッションに依存しています。 こうした方法では、早く会社に貢献したいと熱意にあふれた新入社員にとっては、あまりに多すぎる上に時間がかかることで出鼻をくじかれかねません(これらの画一的なトレーニング資料を作成・更新する人にとっても、もちろん大きな負担です)。 DAPでは、これを以下のように置き換えて、新規ユーザーがソフトウェアを習得するのにかかる時間(と退屈な作業)を削減します。
- テキストを多用した従来のオンボーディングのユーザーマニュアルから段階的なガイダンス付きのインタラクティブなウォークスルーへ
- 一般的な長い動画チュートリアルから特定のタスクに焦点を当てた状況に応じたマイクロラーニングモジュールへ
- 対面式のトレーニングセッションから必要なときに必要な場所ですぐに利用できるオンデマンドのアプリ内サポートへ
受動的で退屈になりがちな学習方法をインタラクティブなセルフサービス体験に置き換えることで、DAPはオンボーディングにかかる時間を大幅に短縮し、新規ユーザーが生産性向上に寄与するまでの時間を格段に迅速化します。
ユーザーエンゲージメントの増加
従来のソフトウェアインターフェースは複雑かつ難しいため、ユーザーの不満や離脱につながる可能性があります。DAPは、以下を提供することでこの課題に対応します。
- インタラクティブなウォークスルー:使いやすいガイドを通してソフトウェア自体の特定のワークフローと機能をユーザーに説明し、リアルタイムで指示するため、アプリケーションと参考マニュアルを切り替える必要がなくなります。
- マイクロラーニングモジュール:必要なときに必要な場所で提供される簡潔なアプリケーション内学習モジュールにより、ユーザーは自分のペースで新しいスキルや知識を習得できます。埋め込み動画やその他のメディアを活用したジャストインタイム学習は、従来の長時間トレーニングセッションよりも魅力的かつ効果的です。
- 状況に応じたヘルプバブル:もう1つのオンデマンドリソースであるヘルプバブルは、ユーザーが最も必要とするソフトウェアインターフェース内の場所で、即座に説明とサポートを提供します。
学習をユーザー体験に統合することで、DAPはユーザーをソフトウェアに引き付け、その可能性を最大限に探求できるようにします。
サポートチケットの削減
新規ユーザーや、特定のソフトウェア機能に不慣れなユーザー(従業員、顧客のいずれも)は、多くの場合、IT部門やカスタマーサポートに支援を求めます。 こうしたユーザーを支援するために必要なソフトウェアサポートチケット、通話、またはライブチャットの処理には、企業にとって数百万ドルの費用がかかる可能性があります。DAPはセルフサービスリソースを提供することで、このような負担を大幅に軽減できます。
アプリ内ガイド、FAQ、ナレッジベースの記事、さらには状況に即した動画によって、ユーザーは一般的な質問に対する答えを自分で見つけることができるようになるため、多くのサポート案件を削減できます。前述のように、オンデマンドの状況に即したヘルプバブルを使用すると、ワークフロー内で不明点が即座に明確になり、IT部門やカスタマーサポートの支援を待つ必要がなくなります。 DAPはまた、個々のユーザーのニーズや役割に合わせて学習体験を調整することができるため、各ユーザーは適切なガイダンスを受け、無関係な情報が過剰に提供されるような事態を避けることができます。
DAPは、ユーザーが自分で問題を解決するために必要なリソースを提供することでITやカスタマーサポートのリソースを解放するだけではなく、より自律的で生産性の高い労働力と顧客ベースも創出します。
デジタルアダプションプラットフォームと、デジタルアダプションを促進する他の方法との違い
ユーザーマニュアル、動画のチュートリアル、対面トレーニングなどの従来のソフトウェアアプリのオンボーディング方法も重要ですが、デジタルアダプションプラットフォームなら、ソフトウェアの定着化に向けてより包括的かつ効果的にアプローチします。 ここでは、考慮すべき主な違いをいくつかご紹介します。
従来の方法
- ユーザーマニュアルは(印刷物であれPDFであれ)文字がぎっしり書かれて長くなる傾向があるため、新規ユーザーは尻込みしがちですし、理解するのに多大な時間を費やす必要があります。また、個々のユーザー向けに作られていないため特定のユーザーニーズやワークフローに対応していない場合もあります。
- 動画のチュートリアルは、個人の役割や学習スタイルに合わせて調整することはできません。多くの場合、ユーザーはソフトウェアと動画を切り替える必要があり、学習フローが中断されます。トレーニング動画の中には、ソフトウェアに関するすべてを網羅したオールインワンのものもありますが、短い動画に分割されている場合でも、ユーザーは必要な情報を正確に探し出す必要があります。
- 対面式トレーニングでは、リアルタイムの対話と質疑応答が可能ですが、特に地理的に離れているユーザーにとっては、調整に費用と時間がかかります。加えて、ユーザーが教室で学ぶ情報は、たとえ授業が録画されていたとしても、すぐに入手できなかったり、簡単にアクセスできなかったりする場合があります。
デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)
- パーソナライゼーション:静的なマニュアルやチュートリアル動画とは異なり、DAPは個々のユーザーのニーズや役割に合わせて学習体験を調整できます。ユーザーは特定のタスクに関連する情報のみを受け取ることができるため、情報過多を回避でき、長いテキストや動画を検索せずに済みます。
- リアルタイムのガイダンス:DAPは、ソフトウェア内で状況に即したヘルプとウォークスルーを提供するため、アプリケーションを切り替えたり、個別の資料を参照したりする必要がなくなります。ユーザーは必要なときに必要な場所ですぐにサポートを受けることができるため、中断やイライラを最小限に抑えることができます。
- データ主導のインサイト:DAPはユーザーの行動とエンゲージメントを追跡し、ユーザーの定着化パターンと潜在的な障害についての貴重なインサイトを提供します。このデータにより、企業はデジタルアダプション戦略を練り直し、ユーザーがソフトウェアを最大限に活用できるようにすることができます。
これらの機能を組み合わせることで、DAPは従来の方法よりも魅力的で効率的、かつデータ主導型のソフトウェア定着化アプローチをとることができます。 ユーザーが使用する必要のあるソフトウェア環境内で自分のペースで学習することを奨励および支援し、学習体験を継続的に改善するための貴重なデータを提供します。
デジタルアダプションプラットフォームはどのように選べばいいのでしょうか?
組織のユーザー(顧客と従業員)への効果を最大化するには、適切なデジタルアダプションプラットフォームを選択することが重要です。 ここでは、DAPを選択する際に考慮すべき主な機能をいくつかご紹介します。
- ユーザーのセグメント化:どのDAPを使用するかを検討する際には、ユーザーごとにニーズやソフトウェア体験のレベルが異なることに留意する必要があります。カテゴリーをまたいだ敏捷なセグメント化とターゲティングを可能にするプラットフォームを選択することは、ユーザーがカスタマイズされたガイダンスとサポートを確実に受けられるようにするだけでなく、不要な情報を受け取らないようにするために重要です。
- 使いやすさ:プラットフォーム自体は、直観的で使いやすく、管理者に広範な技術的専門知識がなくてもアプリ内ガイドや状況に即したヘルプなどのコンテンツを作成・管理できるものである必要があります。定着化を成功させるには、管理者とエンドユーザーにとってスムーズなユーザー体験が不可欠です。
- コンテンツ作成:アプリ内ガイド、ウォークスルー、ツールチップ、マイクロラーニングモジュールなど、さまざまなコンテンツ作成ツールを提供するDAPを探しましょう。ユーザーの関心を維持するには、魅力的でインタラクティブなコンテンツを作成することが重要です。
- カスタマイズ:堅牢なDAPなら、企業のブランディングや特定のワークフローに合わせて学習体験をカスタマイズできます。この連携により、既存のユーザーインターフェースとのシームレスな統合が実現し、ブランドの認知度が強化されます。
- アナリティクスとレポート:データ主導のインサイトは、デジタルアダプション戦略の成功を測定するために不可欠です。ユーザーの行動、エンゲージメント指標、コンテンツのパフォーマンスに関する包括的なアナリティクスを提供するDAPを選択しましょう。このデータにより、改善の余地がある領域を特定し、学習教材を最適化して最大限の効果を得ることができます。
- インテグレーション:学習管理システム(LMS)、CRM、マーケティングおよびワークフロー自動化ソフトウェア、ITおよびカスタマーサポートプラットフォーム、選択したクラウドサービスなどの既存のソフトウェアスタックと統合できるDAPを検討してください。シームレスなインテグレーションによってユーザー体験が円滑になり、データのサイロ化を回避できます。
- 拡張性:会社の成長やソフトウェアニーズの進化に応じて、DAPも拡張できなければなりません。将来の成長に対応ながら、新しい機能を追加していけるプラットフォームを選択しましょう。
- フィードバック:効果的なDAPは、チームがユーザーフィードバックを計画プロセスに積極的に取り入れ、送られたフィードバックが無駄にならないよう支援します。
これらのポイントを慎重に検討することで、従業員の能力を高め、ソフトウェアの定着化を促進し、プラスのROIを実現するデジタルアダプションプラットフォームを選択できます。
デジタルアダプションプラットフォームの投資収益率(ROI)を測定するにはどうすればいいですか?
組織への影響と価値の測定は、最初にデジタルアダプションプラットフォームを導入することと同じくらい重要です。 チームのためにソフトウェアを購入することは大きな投資ですが、適切なデジタルアダプションプラットフォームを選ぶことで、その投資は無駄になりません。しかし、どの指標を追跡すべきかわからなければ、DAPを含むあらゆるソフトウェアの価値(ROI)の定量化は難しいでしょう。
適切なデジタルアダプションプラットフォームにより、企業はデジタルアダプション戦略の影響をさまざまな方法で定量化できます。 チームは、ユーザーのトレーニングとオンボーディングをカスタマイズし、これらの取り組みがどれほど効果的であるかを測定できる必要があります。たとえば、DAPを活用したトレーニングを新たに受けた後、サポートチケットのリクエストの量がどのように減少するかを調べることができます。 あるいは、新しいアプリ内ガイドを導入した後、特定のタスクに費やす時間が減少し、それが重要なKPIに影響を与えたかどうかを追跡することもできます。 ただし、デジタルアダプションプラットフォームのROIは、特定のガイドの成功によってではなく、ソフトウェアが提供する機能一式の定着化をDAPがどれだけ効果的に推進するかによって測られるべきものです。
ここでは、いくつかの主な指標と、包括的なアナリティクスを使用してDAPのROIを効果的に測定する方法をご紹介します。
オンボーディングの時間とコストの削減
効率的なアプリ内オンボーディングは、DAPの主な利点です。この効果を測定するには、DAPを使用して新規ユーザーがソフトウェアを使いこなすのにかかった時間を監視し、それを従来のオンボーディング方法を使用した場合と比較して、短縮した時間を追跡します。この時間短縮はオンボーディングコストの削減につながり、新規ユーザーがソフトウェアをより迅速に活用できるようになります。
ユーザーの生産性向上
オンボーディングだけではありません。DAPはユーザー全体の生産性も大幅に向上させます。 これは、さまざまな方法で定量化できます。
- DAP主導のアプリ内ガイドとウォークスルーが特定のタスクの完了時間にどのような影響を与えるかを調べることで、タスクの完了率を測定します。タスクの完了が早まれば、生産性の向上に直結します。
- DAP導入前後のソフトウェアに関連するITまたはカスタマーサポートのチケット数を追跡することで、サポートチケットの削減を分析します。チケットが減少は、ユーザーが個別に回答を見つけて問題を解決できるということを意味しており、ITやカスタマーサポートのリソースをより複雑なタスクに解放できます。
ユーザーエンゲージメントとソフトウェアの定着率の改善:
DAPは、ソフトウェアに対するユーザーエンゲージメントを大幅に向上させ、全体的な定着率を高めることができます。
- DAPがガイドの完了やコンテンツの使用状況など、プラットフォーム内のユーザーのアクティビティを追跡できるようにすることで、ユーザーのアクティビティを監視します。このデータを分析して、エンゲージメントの高い領域と、ユーザーが苦労している可能性のある領域を特定します。これにより、コンテンツ戦略を改良し、ユーザーがDAPを最大限に活用できるようにすることができます。
- DAPのコンテンツサポートを使用して新機能を起動した後、ユーザーが新機能にアクセスして使用する頻度を追跡することで、機能の使用率の増加を測定します。これは、ソフトウェアの可能性を最大限に活用してユーザーの定着化を促進するプラットフォームの有効性を示すものです。
DAPの完全な価値は、個々のガイドだけでは測れないことを忘れないでください。オンボーディングコストの削減、生産性の向上、ユーザーの定着率向上などのデータを組み合わせることで、DAPへの投資全体のROIを計算できます(Pendoのお客様の70%は、6~8か月以内にROIがプラスになったと報告しています)。
最適なデジタルアダプションプラットフォームとは?
企業がなによりもやってはいけないことは、解決する以上に問題を引き起こしたり、ユーザーにとって新たな障害や負担になるようなデジタルアダプションプラットフォームを選んだりすることです。このページで説明したDAPの他のすべての重要な機能を念頭に置いて、どのDAPが貴社に適しているかを決定する際の最終的な考慮事項を3つ挙げます。
複雑なオンボーディングに注意する:最高のデジタルアダプションプラットフォームは、技術的背景や専門知識のレベルに関係なく、直感的で使いやすい、シンプルかつ合理化された体験とインターフェースをユーザーに提供します。
無秩序なインターフェースを避ける:DAPによってサポートが効率化され、管理者がさまざまなツールやダッシュボード間を常に移動しなくてもすべてのニーズを一元管理できるようにしましょう。
専任サポートにこだわる:優れたデジタルアダプションプラットフォームは、ソフトウェアを単に提供するだけではなく、パートナーとして協力し、成功に導くためのサポートチームの支援があるという点も重要です。
これらの要素に優先順位を付けることで、ソフトウェアの定着化を真に合理化し、煩雑なソリューションに潜む落とし穴を回避して従業員を強化できるDAPおよびDAPベンダーを特定できます。
デジタルアダプションプラットフォームに関する詳細はどこで確認できますか?
Pendoはデジタルアダプションプラットフォームをより深く理解したい方のために、ソフトウェアの定着化を加速させ、従業員の生産性を向上させる方法に関する情報を公開しています。