2000年代初頭にネットプロモータースコア(NPS)が使用されるようになって以来、NPSはソフトウェア企業の成功を示す重要な指標として注目を集めてきました。注目される理由は2つあります。第1に、従来は定量化が非常に難しかった事柄に対し、NPSでは明確な定量的指標であるスコアを提供できます。顧客満足度は、あらゆる財務成果に影響を及ぼす重要な先行指標です。ただしNPSの核となるのは、顧客センチメントを理解(およびベンチマーク)するためのシンプルで一貫した手法である定性的指標です。
NPSが最重要指標である第2の理由は、その予測力です。NPS調査で尋ねられる「このプロダクトやサービスを勧める可能性はどのくらいありますか?」という1つの質問は、肯定的なセンチメントだけでなく、口コミを広げようというエバンジェリズム(熱意)も確認できます。会社の推奨者とは、プロダクトに満足しているだけでなく、他の人にも知ってもらいたいと考える人達(エバンジェリスト)を表します。プロダクトのエバンジェリストが多いほど、そのプロダクトが成長する可能性が高くなります。
現在、NPSスコアは、プロダクトチームやカスタマーサクセスチームにとっての最重要指標であり、取締役会のプレゼンテーションに欠かせないものとなっています。しかし、NPSに課題がないわけではありません。NPSは実はフラストレーションの溜まる指標です。なぜならユーザーを調査する時期や調査手法によって気まぐれに変化するからです。
NPSを理解するのも大変です。スコアが数ポイント下がった場合の理由を知るのは、容易ではありません。真の価値は、顧客がスコアと一緒に記載する定性的な回答にあります。NPSからビジネス価値を得るためには、このデータを収集、統合、共有し、それに基づいて行動するための効果的なプログラムを作成する必要があります。
ここでは、効果的なNPS戦略を構築するための5つのベストプラクティスをご紹介します。
1. 適切なユーザーにターゲットを絞る
NPSのデータは、回答する人々がいなければ意味がありません。強力なNPSプログラムを開発するための最初のステップでは、誰をターゲットとし、その主要な特性が何なのかを慎重に検討する必要があります。自社プロダクトのアクティブユーザーだけを調査対象にするのか。それとも、プロダクトの使用を後押しする意思決定者を調査対象にするのか。また、オンボーディングが完了済みでプロダクトを既にしばらく使用してきたユーザーと新たに使い出したユーザーを、同じ方法で調査したいのでしょうか。
回答してもらいたい対象者を整理することが、価値あるインサイトを提供するNPSプログラムを作成するための第一歩です。
2. 適切なタイミングで質問する
NPS調査の実施にどのチャネルを選択するかは、回答率に大きく影響します。たとえば、回答の収集をメールからアプリ内に切り替えることで、回答率が10倍にも跳ね上がる場合があります。Pendoのお客様企業であるCisionの場合、NPS調査をメールからアプリ内に切り替えたところ回答率が倍増しました。
同様に、選択したチャネルが回答の品質に影響を与える可能性もあります。メールで実施されるアンケートの場合、肯定的であれ否定的であれ、回答を提供する動機が最もある顧客に回答が偏ることがあり、電話の場合は顧客が否定的なフィードバックをなかなか明言しない可能性があります。一方、アプリ内でNPSを収集する場合は、プロダクトの使用状況に基づいてアンケートを提供でき、情報に基づいた視点を提供してくれる顧客に確実にリーチできます。Ciscoはアプリ内でアンケートを回収することで、NPS調査で68%の回答率を達成し、NPSスコアも20%上昇しました。
また、顧客センチメントのみならず機能の使用状況や訪問者の行動まで分析できるため、データの価値がさらに高まります。顧客センチメントを収集する方法とタイミングについて計画的に考えれば、より多くのデータを収集できると同時に、自分のチームにとっての関連性や価値の高さに自信を持つことができます。
3. 共通のテーマを特定する
蓄積されたNPSスコアは貴重なデータポイントですが、その真の価値は数字の背後にある「理由」を理解することで発揮されます。良くも悪くもスコアの変化を説明できるようになるには、顧客の定性的フィードバックに共通するテーマを明らかにする必要があります。これにより、社内チームは、顧客満足度に最も大きな影響を与える投資や改善点を判断できます。
ヒント:こうしたテーマを見つけるために定性的なNPSデータを手作業で調べていては、コストも時間もかかる上、真っ先に切り捨てられる無益なデータになりかねません。Pendoでは手作業不要で、機械学習を使用してNPSのテーマを自動的に浮き彫りにする機能を現在開発中です。ぜひご期待ください。
4. NPSインサイトを共有する
NPSの回答から共通のテーマを特定したら、次はその「財産」を共有します。こうしてユーザーセンチメントを掘り下げれば、組織全体にとっての価値が生まれます。
プロダクトチームは、ロードマップの中で最も影響力のある作業を優先させるために、プロダクトが提供する顧客体験が顧客センチメントにどのように影響するかを理解する必要があります。カスタマーサクセスチームは、介入が必要な不満足な顧客を特定し、限られたリソースをより適切に配分する必要があります。マーケティングチームは、NPSから得たインサイトを活用して、潜在的な有望顧客を特定し育てることができます。全員が関与することで、NPSプログラムの価値は大幅に高まります。
5. フィードバックを循環させる
最後のステップは、NPS調査を通じて貴重なフィードバックを共有するために時間を割いてくれたユーザーに反応することです。推奨者、批判者、中立者のユーザーに対応するための明確なシステムを作成することは、顧客のフィードバックの活用のために不可欠です。自社プロダクトを愛する人々にどのように感謝を示せるでしょうか。不満を抱いている理由を時間を割いて提供してくれた批判者を適切にルーティングするにはどうすればよいでしょうか。Pendoでは、NPSとSlackのインテグレーションを活用して、社内チームがNPS回答を確認するとすぐに適切なカスタマーサクセス担当者に引き継ぎ、次のステップに進むようにしています。
適切に実行されたNPSプログラムは、顧客センチメントのデータの宝庫です。NPSを活用する企業は、まったく新しいチャネルを通してユーザーを理解できるため、よりユーザーのニーズに沿ったプロダクトを開発できます。NPSプログラムの開発に適切に投資し注力する企業では、プロダクト部門、サポート部門、マーケティング部門、および経営陣が顧客にとって最善の決定を下すことができるようになります。
Pendoが最近行ったNPSのための機械学習への投資については、NPSインサイト機能についての詳細をご覧ください。