プロダクトマネージャー(PM)の役割は変わりつつあります。かつてはプロダクトのリリースや機能のアップデートに限定された、ニッチでエンジニアリングと隣り合う立ち位置でしたが、今ではビジネスの健全性に不可欠な総合的な職務として発展しました。景気低迷に直面して、ビジネスリーダーは、成長の促進、解約の抑制、コストの削減など、より良い成果を推進するためにPMとPMが使用するツールに注目しています。
実は、この変化はAIが爆発的に普及する以前に起こっていたことです。
プロダクトチームは、このAI時代において、自らの生活や仕事がどのように変化していくのかについて思いを巡らせています。この革新的なテクノロジーの影響はビジネス業界全体に及び始めており、プロダクトマネジメントの職務にも全く影響がないということはありえません。今後、プロダクト開発の各段階を通じて、PMはAIをパートナーとして受け入れ、かつてないほどにAIを活用できるようになるでしょう。ここでは、具体的なプロダクトマネジメントのライフサイクルの各段階と、AIが各段階にもたらす変化の概要を見てみたいと思います。
第1段階:発見
発見のプロセスを成功させるには、ユーザーと市場の双方の課題を理解しておく必要があります。これは、適切な問いを立てることを意味します。たとえば、ユーザーのプロダクトや機能への要望の中で最も多いものは何か。また、ユーザーの目標達成を妨げているものは何か。このように問いを立てて、データをうまく統合・分析し、正しい答えを導き出すのです。
PMが適切なAI活用ツールを使用すると、カスタマーサポート、NPS、フィードバック、営業やサポートへの問い合わせ、プロダクトの使用状況、その他のソースから得たデータをより上手く統合できるようになります。AIツールは、複数のデータソースからパターンを特定することで、PMの貴重な時間を節約してくれます。これらのツールが実行する分析には、実用的な推奨事項や投資に関する提案を裏付ける根拠などが含まれます。
第2段階:検証
発見の段階で特定された問題点や課題には、有効なソリューションが常に複数存在します。これらのソリューションのうち、「顧客の満足度とビジネスのROIの両方を最大化する」という最高の結果をもたらす可能性が最も高いものはどれでしょうか。ここで、検証の段階が始まります。AIを活用することで、PMはかつてない方法で、自信を持って開発内容を決定できるようになります。
まず、AIによりプロダクトのプロトタイプ開発が従来よりも迅速かつ簡単になります。顧客やその他のデータから得たプロンプトをAIツールに提供することで、PMは検証可能なプロトタイプを素早く生成できます。(たとえば、GPT-4などの大規模言語モデルに、比較的あいまいな説明でより良いコードを作成するよう指示することもできます。)さらに、AIにより、PMは複数のプロトタイプを同時にテストできるようになるため、チームは適切なソリューションを検討する時間が増え、エンジニアが開発を始める前に自信を高めることができます。
第3段階:開発
プロダクトや機能の開発に着手するタイミングでは、通常、ロードマップの取りまとめをサポートするのはプロダクトマネージャーの役目となります。プロダクトマネジャーは、エンジニアリング、カスタマーサクセス、マーケティング、さらには財務やセールスの各部門の架け橋となる存在なので、これらすべての部門が動き始めるために適用範囲、必要な作業、最終目標を計画するための適任者であると言えます。
AIを使用して、PMはプロダクトのテストをロードマップの早い段階に組み込むことができるようになりました。AIツールは、プロダクトのコードベースをマッピングし、機能の変更がプロダクト全体に与える影響を迅速に提案するため、貴重な時間を節約することができます。この革新により、QAプロセスにかかる時間が大幅に短縮され、リリースできる量は増加しました。
第4段階:リリース
最終的にプロダクトをリリースする準備ができたら、ターゲットとなる顧客や見込み客へのリーチを最大化するために、セールスとマーケティング部門を連携させるのがPMの責務です。一般にプロダクトマネージャーは、プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)と協力して、リリースのタイミングや稼働時のプロダクトや機能の位置付けについて、重要なガイダンスを提供します。また、無料機能と有料機能の選定や、コンバージョンとリテンションを最大化することを目的とした特定の機能の有料化の設定などについてもPMが決定します。
ところが、新たなAIテクノロジーの台頭により、PMはリリースのタイミングを手動で決定する必要がなくなるでしょう。その代わり、プロダクトの「スマート」なリリースが行われ、使用状況やユーザーからのフィードバックに基づいて、プロダクト/機能とそれに関連する販促コンテンツの両方が統制の取れた形で展開されます。このデータ主導型のリリースプロセスにより、PMは自動作成されたダッシュボードやレポートを使って目標を監視し、定着率やビジネス成果への影響(収益や解約への影響など)を追跡できるようになります。
AIはまた、どのようなプロダクトのリリースに対しても、プロダクト主導の成長(PLG)メカニズムを適用できます。AIを活用したツールは、個々のユーザージャーニーにおいて最も強調すべき新規プロダクト/機能を特定できるようになります。これにより、ユーザーを定着化の次のステップへと導き、適切なタイミングで適切な有料プロダクトへと確実に移行させるようにします。その結果、コンバージョン率の向上やプロダクト主導型の収益増が見込めます。
第5段階:評価
新しいプロダクトや機能のリリースは、「稼動」させて終わるわけではありません。継続的な成功を確実にするために、PMはリリースに際して反響を呼んでいる点、機能している点、機能していない点を評価する必要があります。そのためには、プロダクトの使用状況データを分析し、ユーザーフィードバックを調査し、リリースに関連したサポートチケットの発生有無やチケット発生の背景を確認することが求められます。
AIは、新しいプロダクトについて有効な点と無効な点を自動で判断し、次に実行すべき内容をPMに推奨することで、この評価の段階を飛躍的に最適化します。また、適切なAI活用ツールは、PMがリリースしたプロダクト/機能のパフォーマンスを監視し、ビジネス成果や目標と照合するためのダッシュボードも作成します。
第6段階:反復
新しいプロダクトや機能のリリースを評価した後、PMは、このリリースにより望ましいビジネス成果が生み出されたのかどうかという問題に立ち戻ります。成果がどうであれ、プロダクトを改善し、さらに優れたビジネス成果を達成するために、PMはプロセスを反復するでしょう。ここでもAIは、これまでに述べてきたような革新的な手段を取ることができます。
ビジネスにおけるAI革命は、プロダクトチームの既存のトレンドを加速させます。未来のPMは、リリースされた機能ではなく、達成されたビジネス成果によって評価されることが増えるでしょう。AIはプロダクトマネジメントのプロセスを加速化し、「プロダクトの成功」と「ビジネス全体の成功」はますます同義になっていくことが予想されます。
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