プロダクトは、人々が実際に使ってこそ価値があります。ソフトウェアの世界では、プロダクトの開発意図のとおりにユーザーがそのプロダクトを利用し始めるときのことを定着化と呼んでいます。

ただし、定着化は単に一時的なものではありません。プロダクトが広く採用され、顧客自らが口コミで販売に加担してくれるレベルに達するには、ライフサイクルを通じて顧客が価値を実現できるよう組織全体で協力し、継続的に取り組むことが必要です。

プロダクト主導のアプローチは、このような部門の枠を超えた定着化プログラムを成功させるために重要です。プロダクト主導型の企業は、定着化がバリューセリングのもう1つの形態であることを認識しており、プロダクト自体を活用することで販売時点のみならずその先も継続的に価値提供ができることを知っています。彼らにとっての成功とは、顧客が投資効果を最大限に発揮できるよう支援し、プロダクトが顧客のワークフローに組み込まれて必要不可欠な存在となることなのです。


マーケティングチームにとって定着化が重要な理由

リテンションは定着化と密接に関係しています。平均して、新しい顧客を獲得するためのコストは、既存顧客を維持するためのコストの5倍です。したがって、金銭的な面だけを見ても、できるだけ多くの既存顧客を維持しようとすることはビジネスにとって有益です。既存顧客を維持する方法の1つは、顧客が投資を最大限に活用し、ユーザーベース全体で健全なレベルの定着化を達成できるよう支援することです。 

マーケティングチームにとって、定着率の向上は解約の減少を意味し、最終的には運営コストの削減(つまり予算の有効活用)と顧客生涯価値(CLV)の向上につながります。また、定着化が盤石になれば、成長や拡大に関連するコンテンツを受け入れ、ブランドの支持者となる忠実な顧客のコミュニティを育成するのに役立ちます。さらに、解約が減少して定着率が向上すると、マーケティングチームはコストのかかるプロスペクティングとトップオブファネルの認知度向上キャンペーンをいつもゼロから始める必要がなくなり、時間とリソースを節約することができます。

マーケティング担当者は、組織全体がプロダクトと機能の定着を推進できるよう支援する独自の立場にあります。また、カスタマーサクセス(CS)、セールス、プロダクト、イネーブルメントなどのチームと緊密に連携して、プロダクトとその機能の価値について、説得力のある心に響くストーリーを語ることもあります。


マーケティングチームがプロダクトと機能の定着をどのように支援しているか

大規模な組織、特にエンタープライズ企業では多くの場合、アダプションマーケティングプログラムに特化したチームがあります。これらのマーケティング担当者はプロダクトチームと密接に連携して、顧客の価値実現までの時間を短縮し、顧客が目標を達成してプロダクトを有効活用するために最も効果的な方法を示します。アダプションマーケティング担当者の主な目標は以下のとおりです。

  • プロダクトや機能の認知度を向上する
  • 顧客にプロダクトの定着と再利用を促す
  • ユーザーの積極的な行動を促し、プロダクトの利用を習慣化させる
  • ユーザーが投資を最大限に活用できるようにするためのガイダンスとヒントを提供する 

カスタマーマーケティングはアダプションマーケティングと密接な関係にあり、定着化やリテンションを促進する上でも重要な役割を担っています。カスタマーマーケティング担当者は、既存顧客向けのマーケティング活動を担当します。彼らのキャンペーンや活動施策は多くの場合、顧客がブランドに好意を持ち、積極的に関与し続けることに重点を置いています。カスタマーマーケティング担当者の主な目標は以下のとおりです。

  • 顧客リテンションを向上する(および解約を削減する)
  • 顧客にブランドの支持者、チャンピオンになってもらう
  • 継続的なエンゲージメントとイベントを通じて、強いコミュニティ意識を育む
  • 顧客が現在利用中のものと併せて他のプロダクトまたは機能の価値を強調することにより、アップセルおよびクロスセルの機会に貢献する

アダプションマーケティング担当者とカスタマーマーケティング担当者は、マーケティング組織全体の他のスペシャリスト(プロダクトマーケティングを含む)と連携して、顧客が、自身が利用できるすべての機能を活用することの重要性と、積極的な使用を加速することがいかに成果を高めるかを理解できるよう支援します。 

さらにマーケティング担当者は、プロダクトや機能のリリース支援、行動変容を促す強力なバリューストーリー、顧客の支持獲得への取り組みの推進など、顧客ライフサイクルを通じてさまざまな施策を打つことによって持続的な定着を促進します。それぞれの例についてもう少し詳しく見てみましょう。

プロダクトや機能のリリースを支援する

プロダクトアナリティクスは、マーケティング担当者がキャンペーンがリテンションに与える影響、つまり最初にプロダクトをインストールしたり使い始めたりした後も、そのプロダクトを使い続けているユーザーや顧客アカウントの割合を理解するのに役立ちます。リテンションデータは、定着化の傾向の貴重な背景情報となり、プロダクトや機能のリリース時のキャンペーンの効果指標としてだけでなく、顧客がプロダクトや機能自体で体験している全体的な価値の指標としても使用できます。マーケティング担当者はこれらのインサイトを利用して、今後のキャンペーンを最適化するためにタイミングやメッセージの内容を調整できます。

プロダクト主導のマーケティングチームは、プロダクトおよび機能のリリース前、リリース中、そしてリリース後をサポートすることで、長期的な定着化を促進します。彼らは、プロダクトまたは機能が対象とする顧客に関する専門家として、それぞれの市場開拓(GTM)戦略を主導します。また、優れたマーケティングチームは、プロダクトおよびデータサイエンスのチームと協力して、過去のリリースで何がうまく機能したか、そして何を改善できるかを理解します。 

プロダクト主導のマーケティングチームは、独自の計画プロセスでプロダクトのリリースを検討し、組織全体のさまざまなチームと連携してデマンド(需要創出)およびナーチャーリング(育成)キャンペーンに取り組むことを常としています。たとえば、プロダクトマーケティングやデマンドマーケティングは、プロダクトチームが新しいプロダクトが競合他社よりも優れていることを強調するメッセージを形作り、そのメッセージをアプリ内ガイド、デジタル広告、その他の資料に含めて、リリース前の認知度を高めるのに役立ちます。一方でカスタマーマーケティングは、新しいサービスがいかに既存顧客のワークフローを補完し適合させられるかを示すようにそのメッセージを編集し、既存顧客に合わせて調整します。

ユーザーの行動を変える

マーケティングはときに人間と同じで、同じことを何度も言わなければ定着しないことがあります。そのため、マーケティングチームは、コンテンツやリソース、イネーブルメントにおいて徹底した働きかけを行い、ユーザーが新しいプロダクトや機能を採用し、それらを最大限に活用するように促すことが重要です。 

プロダクトアナリティクスは、プロダクトや機能のリリース後にカスタマーマーケティングやアダプションマーケティングチームが、誰がいつ新しいプロダクトや新機能を使用しているのかを正確に理解するのに役立ちます。この情報を使用することで作成するターゲットを絞ったアプリ内ガイドを作り、さまざまなコホートをどのように育成するかをパーソナライズできるのです。 

たとえば、アプリ内ガイドを使用して、新機能を試したアーリーアダプターに感謝の気持ちを伝え、より高度な使用方法のヒントを共有する週1回のナーチャープログラムへの参加を促すことができます。逆に、反応が鈍いユーザーやレイトアダプターをターゲットに、新機能で成功を収めたユーザーの声を掲載したり、ライトボックス形式のアプリ内ガイドで機能のメリットをわかりやすく説明したり、ツールチップやアプリ内のリソースハブの通知で機能関連の有用な資料にユーザーの注意を喚起したりすることもできます。

また、マーケティングチームはCSやプロダクトチームと密接に連携し、顧客にとって素晴らしいオンボーディング体験を構築することで、長期的な定着化をサポートすることができます。最も効果的なオンボーディングプログラムとは、顧客がプロダクトや機能の価値をすばやく理解できるものです。あまり詳細まで説明しすぎずに、顧客が使い始めるために必要なちょうどよい量の情報を提供します。言い換えればオンボーディングは、プロダクトまたは機能のメリットが明らかになる「なるほど!」と納得する瞬間(アハモーメント)にユーザーを導きます。ジャーニーの早い段階(オンボーディング中)に重要な機能をユーザーに紹介することで、ユーザーは最初からそれらの機能に慣れることができるため長期間使用する可能性が高くなります。

顧客の支持を味方につける

幸せな顧客は、企業にとって最高の売り手です。彼らはブランドを支持し、プロダクトで何ができるかを示す輝かしい見本となり、他のユーザーや見込み客に自分たちが成功したのと同じツールを活用するよう促してくれます。こうした推奨者は、プロダクトと会社のストーリーを拡大するのに役立ち、マーケティングチームが大規模な定着化を促進するために利用できる強力な味方です。

プロダクト主導のマーケティング担当者は、プロダクトアナリティクスと顧客フィードバックデータを通じて使用状況とセンチメントを理解し、パワーユーザーと潜在的な支持者を特定します。このようなユーザーをターゲットにして、彼らがプロダクトに熱中している間、つまりポジティブな体験が想起されるやすいときにアプリ内ガイドを提供し、フィードバック、レビュー、お客様の声を求めます。マーケティング担当者は、これらのポジティブな意見を自社のマーケティング資料やキャンペーンで活用し、他の顧客や見込み客に、成功したユーザーの足跡をたどるよう促すことができます。

優れたプロダクト主導マーケティングチームは、顧客の成果を称えるチャネルとしてプロダクトを使用することで定着化を促進することもできます。シンプルなアプリ内ガイドで、ユーザーが重要なマイルストーンに到達したことを祝ったり、次のレベルに進むためのヒントを提供したりすれば、喜びの瞬間を作り出すことができます。そしてユーザーがプロダクトとの関わり方を学び、拡大し続けるのを促すことにつながります。

これらの活動はすべて、最終的に顧客がブランドの広告塔になることにつながります。彼らがマーケティング担当者に代わってストーリーを宣伝することで、良い口コミの連鎖が始まり、最終的にはプロダクトを成長させることが支持者のプロダクト体験の一部になるのです。