マーケティングチームは長い間、見込み客や既存顧客とのコミュニケーション手段としてメールを選択してきました(もしくはそれがデフォルトでした)。メールは依然として活躍していますが、プロダクト主導型組織のマーケティング担当者は、さらにより良い方法があることを知っています。

プロダクト主導のマーケティングチームは、販売中のプロダクトという最高のマーケティングチャネルを活用しています。

プロダクト主導型の企業では、組織内のどのグループよりもマーケティングチームが、カスタマージャーニーのあらゆる段階においてプロダクトをコミュニケーションチャネルとして活用しています。マーケティングチームは、プロダクト、カスタマーサクセス、セールスの各チームと連携し、ユーザーがプロダクトを最大限に活用できるよう、アプリ内キャンペーンでアップデートやお知らせを配信し、最終的に最も重要なビジネス目標を推進しています。アプリ内でコミュニケーションを行うことで、マーケティング担当者は、最も適切なメッセージで、最もエンゲージメントが高いオーディエンスをより効果的に引き付けることができます。


アプリ内でマーケティングキャンペーンを行うメリット

アプリ内で顧客とのコミュニケーションを行う最大のメリットは、ユーザーがプロダクトを使用している間にメッセージが配信されるため、タイムリーで関連性の高いメッセージを確実に伝えられることです。マーケティング担当者にとって、これは状況に応じた情報を顧客に届けられることを意味します。プロダクト主導のマーケティングチームは、新しいフィーチャーについてユーザーにメールを送り、彼らがそれを確認するためにプロダクトにアクセスすることを期待するのではなく、最もインパクトのあるタイミング(とアプリケーションのエリア)でメッセージを配信します。

また、マーケティングチームには、アプリ内のコミュニケーションをパーソナライズでき、ユーザーのメタデータやユーザーの行動によってセグメント化できるというメリットもあります。たとえば、アップセルキャンペーンを行う場合、現在使用しているフィーチャーに基づき、追加のフィーチャーが有益だと思われるユーザーにアプリ内ガイドのターゲットを絞ることができます。

ここでは、マーケティング担当者がアプリ内ガイドをセグメント化する方法をいくつか紹介します。

ユーザーのメタデータ:

  • 役割
  • 業種
  • サブスクリプションのタイプ
  • アプリのバージョン

ユーザーの行動:

  • ページやフィーチャーの使い方
  • ネットプロモータースコア(NPS)の回答
  • 投票調査の回答

また、アプリ内でのユーザーや顧客とのコミュニケーションは、他のタイプのマーケティングチャネルよりも効率的です。なぜならば、チームがエンジニアリングリソースに依存することなく、アプリ内ガイドの作成、テスト、測定、反復を容易に行えるからです。プロダクト主導型組織では、プロダクトの他のメンバーと同様に、マーケティング担当者もアジャイル手法を活用し、プロダクト内で顧客に直接アプローチできるため、より迅速に行動できます。


アプリ内マーケティングに優れたコラボレーションが必要な理由

コラボレーションは、プロダクト主導の基本的な柱の1つであるため、アプリ内マーケティングキャンペーンにも部門横断的な取り組みが必要であるのは当然と言えます。このコラボレーションは、組織内の複数のチームがアプリ内ガイドを使用している場合には特に重要です。ワークフローを妨げるような重複したガイドが数多く存在することによって、ユーザーがうっとうしいと感じるのは最も避けたいことです。

マーケティング担当者が、アプリ内キャンペーンで組織内のチームと連携する方法を紹介します。

  • プロダクトマーケティングの専門部署がある場合、その担当者(もしくはチーム)は、プロダクトマネージャー(PM)やプロダクトオペレーションと密接に連携して、新しいフィーチャーに関するアプリ内ガイドを構築したり、既存のフィーチャーの定着を促したりできます。
  • カスタマーマーケティング担当者は、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)と協力して、どのアカウントがリスクがあって、アプリ内教育キャンペーンが有効かを把握します。また、マーケティング担当者はカスタマーサクセスと連携し、ユーザーの役割や業務に応じてパーソナライズされたアプリ内オンボーディングプログラムを構築することもできます。
  • 自社に無料プロダクトや無料トライアルがある場合、マーケティングはセールスと連携し、プロダクト使用状況データから得られた情報に基づいて、無料ユーザーにアップグレードを促すアプリ内メッセージフローを作成することができます。

プロダクト主導のマーケティングチームによるアプリ内ガイド活用法

アプリ内マーケティング戦略は、企業ごとに少しずつ異なります。最終的には、プロダクト、ターゲットユーザー、そしてマーケティング組織の構成に依存します。まず、何を達成したいのかを明確にし、次にアプリ内ガイドやキャンペーンがその目標にどのように貢献できるかを検討することが重要です。

ここでは、マーケティング担当者がこのプロダクトを使用して、ユーザーや顧客により効果的にリーチし、キャンペーンを促進し、ビジネス成果を上げるための主な方法を紹介します。

リリースや定着化のキャンペーン

プロダクト主導型組織は常に新しい機能をリリースしているため、新しいプロダクトやフィーチャーを市場に投入するためには、高度に調整されたリリースを着実に行う必要があります。この仕事では、マーケティング(特にプロダクトマーケティング)が中心的な役割を担います。PMやプロダクトオペレーションと連携し、アプリ内ガイドを作成して新機能を告知し、その価値をユーザーに説明し、導入を促すアプリ内ガイドを作成します。 

アプリ内リリースキャンペーンの構成は、リリースするプロダクトやフィーチャーの規模によって異なります。自社でリリースのレベルや階層が指定されている場合は、アプリ内戦略をそれぞれのリリースタイプに対応させるフレームワークを構築することができます。たとえば、大規模なリリースの場合、ライトボックスでの告知、完全なアプリ内ウォークスルー、そして新機能についてユーザーに再認識してもらうためのアプリ内ガイドを追加で配信することができます。一方、小規模なリリースでは、新しいフィーチャーが特に価値があると思われる一部のユーザーに向けて、状況に応じた新しいフィーチャーを紹介するツールチップを表示するだけでよい場合もあります。

マーケティング担当者は、リリースキャンペーンだけでなく、長期的な定着化の促進のためにも、アプリ内キャンペーンを活用し、稼働後も特定のフィーチャーをユーザーに継続的に使用してもらえるよう促します。まず、プロダクト使用状況データを使って、リテンションや拡大に相関するフィーチャーを特定し、ユーザーをそのフィーチャーに誘導し、その価値を説明するアプリ内ガイドを作成できます。

クロスセルとアップセル

カスタマーマーケティング担当者やチームがいる場合、彼らの重点領域の1つは、既存顧客に追加のフィーチャーやプロダクトの価値を理解してもらい拡大することです。クロスセルとは、企業がスイート内の追加プロダクトを顧客に販売することです。アップセルとは、より多くの使用容量や追加機能を提供することで、顧客に同じプロダクトをより多く販売することです。たとえば、プロダクト主導型の優れた企業は、アプリ内の自動メッセージで購入金額上限を知らせ、追加購入を促すなど、プロダクトを活用してそのような動きを促進しています。

ここでは、カスタマーケティングチームがアプリ内ガイドを使用して、クロスセルやアップセルの取り組みをサポートする事例を紹介します。

  • より高度なフィーチャーの機能を示すアプリ内ツールチップを作成し、既存のサブスクリプションでは制限があることや、その場ですぐにアップグレードしてフィーチャーが解放されるともらえるボーナスポイントを顧客に示す。
  • プロダクトアナリティクスとNPSデータを使って、エンゲージメントと満足度の高いユーザーを特定し、そのユーザーを対象に、より高い価値を提供できる高度な機能を強調するアプリ内ガイドを提供する。
  • 2つの補完的なプロダクトを提供している場合は、アプリ内ガイドを使用して、現在使用していないプロダクトと、それがどのように現在のワークフローを改善できるかについてユーザーを教育する。
  • フリーミアムプロダクトにアプリ内アップグレードオプションを組み込むことで、無料ユーザーが有料の機能を利用しようとした場合はアプリ内で簡単にアップグレードでき、すぐに価値を得られるようにする。

イベントプロモーション

すでに自社のブランドと関わっているユーザーや顧客にリーチできるため、自社プロダクトは今後開催されるイベントを宣伝するのに最適な場所です。また、マーケティングチームにとっても、このイベントを特に重要視するターゲットにプロモーションできるというメリットがあります。特定の都市でユーザーグループやコミュニティの集まりがある場合、プロダクトアナリティクスのデータを使って、その地域のユーザーを特定し、アプリ内ガイドをターゲット設定することができます。同様に、ユーザーベースの特定のペルソナに関連するソートリーダーシップを提供する業界イベントを開催する場合、アプリ内のプロモーションを、その特定のコホートにのみ表示することができます。 

また、アプリ内ガイドをプロダクトの適切な場所に配置することも重要です。たとえば、あるフィーチャーについてウェビナーを開催する場合、ユーザーがそのフィーチャーを使ったときにだけガイドが起動されるように設定します。どの種類のアプリ内ガイドを選択するかは、イベント自体によっても異なります。ユーザーの大半に関連する大規模なイベントには、注目を集めるライトボックスが必要かもしれません。一方、教育目的のウェビナーは、ユーザーのワークフローを妨げないバナーでプロモーションするのがよいかもしれません。

 オンボーディング

オンボーディングは、カスタマーサクセス、プロダクト、マーケティングなど、組織のさまざまなチームが担当することが考えられますが、何らかの形で関与する可能性が高いのが、おそらくマーケティングチームでしょう。

プロダクト主導型の企業は、オンボーディングを一連のメールやリソース集約的なライブセッションで行うのではなく、プロダクトを活用してユーザーにこの重要な最初の体験を提供します。さらに、優れた企業では、役割や管理者レベルごとに個別のフローを作成するなど、ユーザーの特定のニーズに合わせてオンボーディングをパーソナライズしています。ユーザーができるだけ早くプロダクトの価値を理解できるようなオンボーディングを構築するために、アプリ内オンボーディング体験は、以下のタイプから選択できます。

  • 単一ページ:プロダクト(特にモバイルアプリ)が直感的に操作できれば、新規ユーザーには単一ページでの紹介とウェルカムメッセージだけで十分な場合があります。また、アプリの主な利点を説明するフルスクリーンガイドでオンボーディングを開始し、残りのオンボーディングをどのように体験するかをユーザーに選択させることも有効です(例:ユーザー主導型オンボーディング)。
  • インタラクティブウォークスルー:この方法では、ポップアップとインタラクティブなツールチップを組み合わせて、新規ユーザーを主要なワークフローに誘導することができます。また、ライトボックスを使って、ユーザーインターフェース(UI)の他の部分を暗くし、個々のフィーチャーを強調することで、プロダクトの中で特に重要なエリアやアクションをユーザーに示すことができます。
  • ユーザー主導型:これは、オンボーディング中にヘルプを受けるタイミングをユーザーがコントロールできるものです。アプリ内のリソースセンターに、オンボーディングガイドをすべて格納しておき、ユーザーが必要なときにいつでもこのライブラリにアクセスできるようにしておきます。また、[ヘルプ(Help)]ボタンを追加し、クリックすると特定のフィーチャーについてのチュートリアルが記載されたガイドが起動するようにすることも可能です。

ソーシャルプルーフ(社会的証明)

プロダクト主導のマーケティングチームは、プロダクト内で顧客フィードバックやコメントを募集していますが、これには主に2つのメリットがあります。第一に、これらのリクエストが状況に応じたものであるため、お客様の現在のプロダクト体験がプロダクトに関する発言に反映され、より正直な回答を引き出せる可能性があります。第二に、マーケティング担当者は、アプリ内の働きかけでよりターゲットを絞り、パブリックレビューやコメントを依頼する相手(つまり最も満足度が高く成功している顧客)を選択することができます。

実際の例をご紹介します。

  • プロダクトアナリティクスでエンゲージメントの高いユーザーを特定し、アプリ内ガイドでターゲット設定して簡単なコメントを依頼する。
  • アプリ内でNPS調査を実施している場合、高いNPSを回答したユーザーに対して、レビューを依頼する追加のプロンプトを作成し、自動的にサードパーティサイトにリンクさせる。
  • モバイルアプリの場合、アプリ内ガイドを使って、星1つから星5つの評価を求めるシンプルなプロンプトでアプリストアの評価を募り、コメントやフィードバックのための追加フィールドも用意する。

他のアプリ内キャンペーンと同様、マーケティングチームにとって、レビューキャンペーンのパフォーマンスを監視して測定することは重要です。どれくらいのレビューが得られたか?ターゲットオーディエンスの微調整や最適化の余地はあるか?異なるコピー文をテストできるか?まだ実施していない場合、インセンティブを提供する必要があるか?こうした問いかけにより、適切なタイミングで適切なユーザーにリーチし、ポジティブなレビューや強力な成功事例の確固たるライブラリを継続的に構築することが可能になります。

ユーザー調査

マーケティングチームは、多くの場合、プロダクトチームやリサーチチームと連携し、既存のプロダクトエリアの名称変更や新しいフィーチャーのターゲットオーディエンスの把握など、まだ進行中の取り組みについてユーザーから意見を収集します。このような働きかけは、アプリ内での収集に適しています。なぜなら、これはプロダクトの使用体験(とプロダクトに対する意見)が最も気になるときに、ユーザーにリーチできるためです。

アプリ内キャンペーンをユーザーリサーチに活用することで、マーケティング担当者は、市場に出す前にアイデアをテストして検証できるため、よりデータ主導のアプローチを取ることができます。アプリ内ガイドを使用すると、フィードバックをすばやく得て、関連情報を一貫してプロダクトチームに伝えることができます。また、このデータは新しいプロダクトやフィーチャーがリリースされた後のマーケティング戦略にも役立つため、チームは新しいプロダクトとユーザーが求める価値とをより深く結びつけることができます。