はじめに
「平常運転」では通用しなくなるとき
企業が2023年に向けた戦略的な活動を我先にと進める中、経済状況は改善の前にさらに悪化すると予測されています。年内に本格的な不況が到来する可能性が高いと見られていますが、そんな中かつてはリソースが無尽蔵にあると思われていた大企業や、成長のためにいくらでもコストをかけられた企業も、これまでどおりのビジネス運営ができなくなっています。
現在、成長のためにかけるコストは適正でなければならず、また予算とリソースの効率的な使用が何より優先されます。これは、メッセージの発信やターゲティング、リード生成、商談の成立、そして顧客への価値提供をさらに効果的に行うことを意味します。では、成長と効率化を推進するために最も効果的な方法は何でしょうか?
答えは、あなたのプロダクトです。
PendoとMind the Productが500人以上のプロダクト担当者を対象に行った新しいアンケートでは、企業が将来に備えて「プロダクト主導の成長(PLG)戦略の導入」を進めている傾向が明らかになりました。回答者の54%が、現在の景気後退期に自社がPLGを導入または加速したと述べており、29%は景気後退より前にPLG戦略を導入していました。
プロダクト主導の成長(PLG)とは
PLGは、企業のソフトウェアを購入過程および顧客体験の中心に据えるビジネス戦略です。PLG戦略は、「販売」の多くをプロダクト自体(その機能、性能、口コミ)が行うモデルです。
大部分が自動化されていることからもその理由がわかります。予算が厳しくなり、採用が停止または縮小されている現在、今のままでよいという選択肢はもうありません。プロダクト自体を営業活動やマーケティング活動に活用することで、高価な広告キャンペーン、時間や人手がかかるアウトリーチ、およびその他の運用経費に費やされる貴重なリソースを節約できます。
しかし、企業が成長と効率性を求めて自社のプロダクトに目を向けている理由は他にもあります。それはプロダクトが持っている、顧客とユーザーに関するデータです。「2023年以降、組織によるプロダクトマネジメントの取り組みを左右するのはどのようなトレンドか」という質問に対して、61%の組織が「プロダクトデータによって新しいビジネス判断が可能になったこと」と回答しました。
不況が差し迫った中で企業が成功を収めるために実施している5つのPLG戦略と、それぞれの戦略でデータが果たす役割を詳しく見てみましょう。
1. リテンション
使用状況のインサイトにより解約を事前に防止
企業が成長を実現するには、新規顧客を獲得し続けることだけでなく、既存顧客の維持も必要です。言い換えれば、解約率の低さは成長モデルの成功の要のひとつであり、エンタープライズ規模では数百万ドルの節約に相当します。解約を少なくしてリテンションを高めることは、効率性を向上させるための重要な要因でもあります。ほとんどの場合、新規顧客の獲得には、既存顧客の維持よりも多くの費用、時間、リソースがかかります。リテンションを促進する最善の方法は、顧客が継続的にプロダクトから最大限の価値を引き出せるようにすることです。
最も先進的な企業や大規模組織は、プロダクトアナリティクスの力を活用して、顧客の利用データを調査し、プロダクトポートフォリオ全体で解約リスクがあるアカウントを特定しています。特定のアカウントの使用量が長期間にわたって大幅に減少している場合や、新しい機能を採用していない場合、ユーザーがワークフローの重要なポイントで離脱していると思われる場合など、さまざまな兆候が潜在的な問題を示している可能性があります。
幸いプロダクトチームは、こうした問題やその他の潜在的な問題をカスタマーサクセス部門に知らせることができます。カスタマーサクセス部門は積極的にアカウントに連絡を取って確認したり、発生する可能性がある問題の解決を支援することができます。また、これらのアカウントをカスタマイズおよび自動化されたアプリ内サポートのターゲットにすることもできます。このように自社プロダクトを活用して積極的で拡張性の高いアウトリーチを実現している企業では、顧客の解約が5%低下し、売上維持率(NRR)が15%増加していることが、Pendoの調査で判明しています。
2. 拡大
アプリ内でクロスセルとアップセルの機会を推進
プロダクトアナリティクスを使うことで、企業は顧客の健全性を正確に測定できるだけでなく、適切なタイミングで、適切な拡大の機会について、適切なアカウントをターゲットするのに役立つインサイトが得られます。そして、それを大規模に実現するために自社プロダクトを活用している企業は、自動化による効率化を実現しています。
アップセルの例を考えてみましょう。企業は自社プロダクトのフリーミアム版をユーザーに提供する場合があります。このバージョンでは、効果はすぐに得られるものの、使用できる機能やユーザー数は制限されます。フリーミアムの顧客がフリーミアム版の制限に達すると、企業は通知を送信して、有料版のサインアップを迅速かつスムーズにできるように促します。プロダクトに複数の有料バージョンがある場合、企業は、使用時の行動などに基づいて、提案や広告を顧客に合わせて調整できます。
このアプローチにより、企業は実際の結果を把握できるようになり、顧客にとってはアップグレード体験がシームレスになります。たとえば、Citrixは、Pendoのユーザーデータに基づいてターゲットを絞ったメッセージにより、トライアルコンバージョンを28%増加させることができました。
Pendoの調査によれば、プロダクト主導型戦略に投資している企業では、平均で、顧客の解約が5%低下し、売上維持率(NRR)が15%増加しています。
出典「The business value of being product led(プロダクト主導がもたらすビジネス価値)」
3. カスタマーサクセス
サポートとオンボーディングの効率的な拡大と自動化
IT部門の時間とリソースの大きな浪費として挙げられるのが、顧客からの問い合わせです。同様に、従来の新規ユーザーのオンボーディング手法も非常に時間と人手がかかる場合が多く、新しい顧客は長く、時に退屈なトレーニングが終わるとすぐに、その内容の多くを忘れてしまいます。この両方の問題に対処し、IT部門と顧客がより高い戦略的優先事項に集中できるようにするために、プロダクト主導型の企業はアプリ内通知を活用するプロダクト主導の戦術を採用しています。
アプリ内メッセージングを活用して状況に応じたガイダンスを提供している企業では、サポートへの問い合わせ数が平均で15%減少し、オンボーディング時間が27%減少しています。アプリ内ガイドとウォークスルーにより、企業は、顧客の需要拡大に合わせてサポートとオンボーディングの「供給」を維持できるように、簡単に規模を拡大できます。従来のトレーニングとは異なり、これらのガイドでは、ユーザーがアプリを使用しているときにリアルタイムで使い方を説明し、ユーザーはその場で設定をすぐに行えます。さらに、ユーザーはいつでも必要なときにガイドを利用できます。これは、世界中に顧客と従業員がいて、24時間プロダクトを使用している大企業にとっては特に有益です。
4. フィードバック
包括的なフィードバック管理システムの構築
多くの企業が「フィードバックする文化」の育成について話していますが、実際にその道を歩む企業は残念ながら少ないものです。どの組織でも、フィードバック収集は複数のチャネル(電話、Zoom、メールアンケートなど)でこれまでも行ってきましたが、まとまりがなく、不規則で、戦略的に行われているとは言えません。エンタープライズ企業や、複数のプロダクトを扱う大規模な組織の場合は特に、各部門で収集したフィードバックを管理したり理解したりすることがますます難しくなります。その場合、顧客から得た貴重なインサイトが「ブラックホール」に吸い込まれて消えてしまい、分析や対処ができなくなります。
プロダクト主導型の企業は、重要な疑問に答えるための貴重なリソースとしてフィードバックを活用しています。たとえば、プロダクトのどの部分が正常に機能しているか、どの部分を改善できるか、顧客サービスを効率化するにはどうすればよいかなどです。より高い価値をより迅速に提供するインサイトを得るために、ユーザーからのフィードバックはアンケートや調査を通じて、最も適切な時と場所で収集すべきです。すなわち、アプリ自体で収集するのです。また、フィードバックを一元管理することで、プロダクトアナリティクスとユーザーのセンチメントデータを関連付け、フィードバックから得たインサイトから簡単かつ効率的に次に取るべき行動を決定できます。
たとえば、Oktaのチームでは四半期ごとに収集するフィードバックの数の増加率が50%を超え、そのインサイトを活用して機能の導入を推進し、ユーザーリテンションを改善しました。
5. 優先順位付け
データを基盤とした、脱線しないロードマップの作成
プロダクトデータからは、今すぐ何を修正すべきかだけでなく、今後何を作るべきかもわかります。プロダクトデータを活用してロードマップを決定することで、どんなチームでも効率を高めることができます。しかし、企業の規模が大きいほど、価値を最大限に高め、期限内かつ予算内で、顧客の実際の要望と一致するプロダクトや機能を提供するためには、プロダクト開発やエンジニアリングに伴う無駄や労力を削減することが必要不可欠となります。
プロダクトとエンジニアリング部門は「勘」に基づいて業務を進めることが今でも多くあります。つまり、プロダクトや機能に優先順位を付けるにあたり、行動データや使用状況データを考慮しないのです。しかし、このやり方は効果的でないことがわかっています。Pendoの調査によれば、プロダクトの機能の内最大80%がほとんど使われていないか、まったく使われていません。これは、新しい機能について不必要な支出があること、時間とリソースが浪費されていること、ROIがないことを意味します。これらはすべて、特に多くの利害関係者が説明責任を負う上場企業や組織にとってはあってはならないことです。
計画を立てるためのより良い方法があります。それは、ユーザーの要望とニーズを十分に把握することから始まります。利用状況分析からの定量的データと、顧客からの定性的フィードバックを結び付けることにより、何が最も利用されているか、ユーザーが何を最も必要としているか、ユーザーがプロダクト体験についてどのように考えているかを知ることができ、より良いプロダクトを、より速く、より効率的に開発することが可能になります。
おわりに
プロダクトを通じて組織の将来性を確固たるものにする
顧客や見込み客に関するデータ(課題、機能リクエスト、ビジネス上の希望など)が多ければ多いほど、現在のプロダクト、そして将来開発するプロダクトを顧客や見込み客に合わせて調整し、顧客が本当に必要とするプロダクトを提供できます。これにより、顧客を成功に導くことができるのです。このように体験をカスタマイズすることで、プロダクトがビジネスを加速、そして効率化できるのです。
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