ベストプラクティス

デザインチームがプロダクトデータを活用してビジネスに付加価値を与える方法

2023年8月31日 公開
便利で使いやすく、愛されるプロダクトを開発する上でのデザインの役割とは

デザイナーは、単にワイヤーフレームや高解像度デザインなどのビジュアルを作成するだけでなく、それ以上のビジネス価値を提供できます。しかし、多くのデザイナーはその手段を明確に説明することに悪戦苦闘しています。

プロダクトデザイン業界に数年いる人なら誰でも、単に視覚的な成果物を作るだけではもはや不十分であることを知っています。デザイナーには価値、成果、データの観点から語れるようになることが求められています。ベストプラクティスやデザインの原則を用いること自体は良いことである一方、真に優れたプロダクトをデザインするという点では、それはやるべきことの半分にすぎません

ユーザーデータを分析することで、情報に基づいた意思決定を行うことができます。これは、リスクを低減し、特定のユーザーニーズに合わせてプロダクトを調整し、実際の使用状況に基づいてプロダクトを反復するのに役立ちます。これについて詳しく見てみましょう。

 

UXにとってデータ分析が重要な理由

定量的情報と定性的情報の両方にアクセスできることは、デザイナーがプロダクトに関してより適切で知識に基づく意思決定を行う上で重要です。定量的なインサイトは、通常、数値またはブール値であり、測定可能です。これには、「何」を教えてくれるという価値があります。一方、定性的なインサイトは主観的であり、「なぜ」を教えてくれます。これは、ユーザー体験の全体像を把握するために不可欠です。

それぞれの例を以下に示します。

定量的

  • CSAT(顧客満足度)
    ユーザーのプロダクトやサービスに対する満足度の数値による評価
  • NPS(ネットプロモータースコア)
    ユーザーがプロダクトやサービスを他のユーザーに推奨する度合い
  • 成功率
    特定のタスク(プロダクトのオンボーディング、有料プランへのアップグレード、新機能の確認など)を完了したユーザーの割合

定性的

  • エスノグラフィー
  • ユーザーインタビュー
  • フォーカスグループ

ページの閲覧数やボタンのクリック数などの定量的な指標のみに焦点を当てると、ストーリーの半分しか得ることができません。たとえば、特定のアクションが頻繁に実行される理由は多数あり、ユーザーが実際にタスクに価値を見出すことと直接関係していない可能性があります。しかし、定性的なインサイトも併せて確認することで、ユーザーが特定のアクションを実行している(または実行していない)理由を把握するのに役立ちます。また、デザイナーは、ユーザーに対する共感力を高め、ユーザー体験に伴う感情の変遷を理解することも不可欠です。

その一方で、ユーザーインタビューのデータなどの定性的なインサイトのみに焦点を当てると、デザイン上の決定による影響の測定が難しくなり、デザインのビジネス価値を明確に説明することが困難になります。さらに、インタビューでのユーザーの発言は、データから得られるストーリーと一致しない可能性があります。そのため、両者を並行して確認し、根本的な問題に到達するために深く追求する機会があるかを見極めることが重要です。

データの傾向を分析し、ユーザーのパターンを理解し、継続的な顧客フィードバックのループを構築して、長期にわたって情報に基づく意思決定を行うことを学んだデザイナーは、自らのアクションのビジネス価値をより効果的に伝達できるようになります。最終的には、「見栄えだけを良くする」デザインの罠から脱却し、顧客やビジネス、そしてデザインしたプロダクトに大きな影響を与えられるようになります。

この種の分析を実施することで得られる具体的な効果をいくつかご紹介します。

  • チームがユーザーのニーズに沿った機能や機能強化に優先的に取り組めるよう支援し、最大の価値と効果を生むエリアに確実に投資が行われます。
  • ユーザーに響かない可能性のある機能に投資するリスクを軽減します。
  • プロダクトの学習や競合プロダクトへの露出、技術的なスキルセットの変化、業界知識の増加などの要因に伴い、経時的に進化するユーザーの期待に応じて、実装する機能や変更が適切であるようにします。
  • データを通じてユーザーへの影響を確認し、チームが自らの仕事の価値と効果を把握できるようにします。たとえば、直近の機能リリース後のデータの傾向を確認することで、デザイナーは自らの仕事によりどのくらい解約数が減少し、リテンションを向上させたのかを理解できます。また、この結果をエンジニアリングチームと共有することで、自らの仕事をユーザーやビジネス価値につなげることができます。
  • ユーザビリティ改善の機会を特定する上で、デザイナーの自信を強化するのに役立ちます。ユーザーデータを継続的に分析することで、刻々と変化するユーザーのニーズにさらに近づくことができます。デザイナーは、ユーザーの既存の課題やプロダクト改善の機会を特定する際に主導権を握ることができます。このようなインサイトは、プロダクト内の不整合などの問題に積極的に対処し、デザインやインタラクションに関わる決定を下す際に、価値創造までの時間を短縮する方法を探るのに有効です。
  • ユーザーセンチメントとユーザー体験を理解することで、ユーザーからの信頼とロイヤルティを高めます。プロダクトチームは、ユーザーについてより深く、より共感的に理解できるようになります。

どれも効果がありそうですよね。しかし、この種のデータ分析がプロダクト、ユーザー、組織に及ぼす実際の影響度はどれくらいでしょうか?

プロダクト自体の観点からユーザーデータを深く理解しているデザイナーは、不整合や不必要な冗長性を特定し、特定のフローを簡素化する方法についてデータに基づくインサイトを得ることができます。

たとえば、単純なはずのタスクの完了までにユーザーが12回クリックしている状況を見れば、価値実現までの時間を短縮できる可能性があると分かります。完了に要したクリック数のみに基づいて体験を分析することに価値があるとは限りませんが、手順を簡素化および削減できる機会を把握することには必ず価値があります。また、類似する2つのページにおいてコンバージョン達成率が極端に異なる場合、ユーザーの混乱を招き、不必要な作業を強いるようなUIの不整合が存在するかもしれません。

このような分析は、エンドユーザーや顧客にとっても大きなメリットがあります。プロダクトに関する意思決定を行うチームにとっては、改善すべきエリアが明確になります。そのため、チームのユーザーに対する共感力が高まり、ユーザーがプロダクトを使用するコンテキストを理解でき、顧客満足度の向上、価値実現までの時間短縮、および価値の増大につながる調整を実施できます。

指標の例

デザイナーが顧客のニーズをより深く理解し、意思決定をビジネス価値に結び付けるために確認すべき指標がいくつかあります。 

行動:ユーザーが何をどのように行うかの理解

  • ユーザーエンゲージメント
    プロダクトとの経時的なユーザーインタラクション活動の指標を指します。
  • タスク成功率
    タスクを正常に完了した参加者の割合。この測定方法において重要かつ困難なポイントは、成功基準を定義することです。タスクを成功裏に完了する方法は多数存在する可能性があるので、この指標を評価するチームは、目標を明確に定義する必要があります。
  • タスクに費やす時間
    ユーザーがタスクを完了するのにかかる時間を測定します。これは、プロダクトの既存の体験を評価し、複雑さを軽減する機会があるかどうかを判断する際に役立ちます。
  • エラー率
    発生したエラーの総数をタスクの総試行回数(または潜在的なエラーの総数)で割って算出します。これは、タスクの完了に関連するユーザー体験の複雑度を理解するための優れた方法です。
  • コンバージョン率
    望ましいアクションを実行したユーザーの割合を指します。これは、UXがビジネス目標とうまく結びついていることを理解するのに特に役立つ指標です。
  • ミスクリック率
    プロダクト内のリンクやボタンなどのホットスポットまたはクリック可能な領域以外でのミスクリックの平均数。
  • ユーザーリテンション
    特定の期間の初回利用ユーザーを対象とし、以降の期間に再訪したユーザーの割合を算出するという重要な成長指標。
  • 顧客解約率
    サブスクリプションの終了時に更新しないことを選択した顧客数を測定します。
  • 離脱率
    そのセッションが最後である訪問者の割合を指します。
  • 直帰率
    そのセッションが唯一の訪問である訪問者の割合を指します。
  • 機能の定着率
    プロダクトの特定の機能の使用状況を測定する重要な指標のひとつ。ユーザーが定着する機能が多ければ多いほど、ユーザーのメリットは増大し、プロダクトを手放す可能性は低下します。機能の定着率は、リテンションに関わる重要な指標となります。
  • プロダクトエンゲージメントスコア(PES)
    定着率、粘着率、成長率の平均値で構成される複合指標。Pendoでは、定着率はすべてのアクティブな訪問者またはアカウントが定着したコアイベントの平均数で測定されます。粘着率とは、週間アクティブユーザー(WAU)のうち毎日再訪問するユーザー(DAU/WAU)の割合の平均値、月間アクティブユーザーのうち毎日再訪問するユーザー(DAU/MAU)または毎週再訪問するユーザー(WAU/MAU)の割合の平均値です。成長率とは、新規および再訪したアカウントまたは訪問者数の合計を、離脱したアカウントまたは訪問者数で割ったものです(Quick Ratioとして知られています)。

態度:ユーザーが信じ、感じ、考えること/動機と態度

  • システムユーザビリティスケール(SUS)は、デザイナーがプロダクトとサービスの両方の体験に対するユーザーの視点を評価できるようにするアンケートです。複雑さ、使いやすさ、ユーザーの信頼度などの観点から体験を説明する10個の文章で構成され、5段階のリッカート尺度を用いて、回答者が各文章に強く同意するか反対するか(またはその中間か)を共有します。
  • ユーザー満足度は、ネットプロモータースコア、顧客努力指標、顧客満足度、アンケート、フィードバックフォームなどの方法で測定します。
  • 標準化ユーザー体験パーセンタイルランクアンケート(SUPR-Q)は、5段階のリッカート尺度によるアンケートという点でSUSに似ており、ユーザビリティ、ユーザーの信頼度、外観、ロイヤルティなどに関する使いやすさの度合いを測る8つの文章で構成されます。4つのセクションそれぞれに、ユーザーがフィードバックを提供するための2つの文章が含まれます。NPSもこの測定の一部です。SUPR-Qは、異なる組織の類似プロダクトを比較するためにも使用できます。
  • UMUX-Liteは、やや長めの4文で構成されたオリジナル版UMUXを短縮した2文から成るアンケートです。SUSやSUPR-Qと同様に5段階または7段階のリッカート尺度が用いられていますが、SUSはユーザビリティと学習可能性を、SUPR-Qはユーザビリティ、信頼度、外観、ロイヤルティを評価します。UMUX-Liteは有効性、効率性、満足度を評価するものです。

多様な指標を使いこなす方法

ご紹介した指標は、デザイナーがユーザーを深く理解するために活用できる数多くの指標のほんの一部にすぎません。単一のプロセスにおいて必要不可欠な要素というよりは、ツールキットに含まれる道具として捉えるのがベストです。この種の分析から価値を引き出すには、利用可能な手法を理解し、どの手法をいつ使用するのが最も合理的であるかを判断することが重要です。

まずは、自分自身と自らの所属チームに対して以下の質問を投げかけてみましょう。 

利益を上げるための会社のビジネスモデルや戦略はどのようなものですか?

この問いは、もはやプロダクトマネージャーだけに課せられるものではありません。デザイナーもこれを理解しておく必要があります。

たとえば、ユーザーが以前使用していた機能に簡単にアクセスできる新しいページのデザインを最近開始したとします。ただし、これは有料ユーザーのみが利用できる機能セットの一部です。ここで、今回のデザイン業務に紐づく望ましいビジネス成果について尋ねることが重要です。なぜなら、より多くのフリーミアムユーザーを有料ユーザーにコンバージョンさせることで定着率の増加を狙うことが目的であれば、無料ユーザーが機能にアクセスできなくなるからです。

デザインの効果を測定するために、組織はどのような重要業績評価指標(KPI)を追跡していますか? 

デザインに関するKPIは重要なトピックであり、このトピック単体で記事を書く価値がありますが、上に挙げた指標の多くは、特にこのコンセプトを理解したいと考えている組織によって定期的に評価されています。チームは、自らの理にかなうことを検討し、評価と測定の計画を立てるべきです。これはプロダクトに良い影響を与えるだけでなく、デザイナーが自らの業務の改善方法を知るのに役立つため、組織全体にも良い影響を与えます。さらに、デザイナーが自らの意思決定による影響を明確に説明できるようになるため、市場においてより競争力の高いスキルセットを獲得できます。

指標を改善するためのデザイン戦略はどのようなものですか? 

デザインに取り組むたびに、何十もの意思決定が下されます。たとえば、これらの意思決定により、「このアプリケーションの機能は要件を満たしている」という文章に対する回答を「まったくそう思わない」から「強く同意する」に変えるにはどうすればよいでしょうか。

プロダクトには深く体系的な商機が存在するかもしれませんが、フォームフィールドのラベルを変更するだけで、大きなプラスの影響が生じる可能性も十分にあります。これらの指標のベースラインを確立し、長期的に確認することで、何を・いつ・どのように改善する必要があるのかをより明確に理解できます。

初めて取り組む場合、どこから手を付ければいいですか?

プロダクトマネージャー、リサーチャー、データアナリストは、貴社においてすでにこの種のデータを確認している可能性が高いです。もしあなたがこのプロセスに慣れておらず、かつデータ分析の担当者と連絡が取れるのであれば、彼らと話し合い、貴社がすでに保有しているデータにアクセスできるかどうか尋ねてみても損はないでしょう。

それが難しい場合は、この種のデータを収集し、簡単に分析できるプロダクトに投資することをチームのリーダーに相談してみましょう。Pendoは、すぐに開始できる無料オプション(定量的データと定性的データの両方)を提供しています。データ主導型のデザインに投資する価値がある理由をまとめた簡単な提案書を作成し、リーダーシップチームと共有することで、話し合いに役立てることができます。まずは、小さなことから始めましょう。評価を始めたい指標をいくつか提案し(SUS、NPS、PESが最適です)、それらの指標を定期的に確認し、共有する計画を立てましょう。

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